広がる統計不正 国会の劣化が招いた< 統計の操作は官僚の習い性だとしても、政治が見過ごしてきたのは、行政の暴走を許す危険な兆候だ!底流にあるのは国会の行政監視能力の劣化だろう!>
2019年 02月 04日
1月31日付東京新聞朝刊4面に、「視点」という欄がある。筆者は、論説副主幹・豊田洋一氏だ。
今日は、この筆者に学ぶことにした。
まず筆者は、「学生時代、統計学の授業で最初にに学んだのは、発展途上国の年齢統計では0又は5で終わる年齢の人口が突出する現象が多くみられる、ということだった。
自らの年齢を正確に知らない人が多く、切りのいい数字を応えるだという。
Age Heaping(エイジ・ヒーピング)と呼ばれるこの統計はもちろん正確ではない。正しい統計がいかに大切かを教えるのに適した事例なのだろう。
30年以上も前のことを久々思い出したのは、厚生労働省による毎月勤労統計を巡る不正が政権を揺るがす大問題になっているためである。
不正発覚を機に、政府が56の基幹統計を調べたところ、半数近い23で計34件もの不適切処理事案が見つかった。
とても先進国の統計と胸を張ったり、他国の統計を不正確だとおとしめたりできる状況ではあるまい。」と切り出した。
続けて筆者は、「なぜ統計は正確でなければならないか。それは、国でも地方自治体でも企業でも家計でも、何かを決めるときの判断材料になるからだ。基になる数字が違えば、異なった決定になりかねない。
毎月勤労統計の不正では、一度決めた2019年度予算案の閣議決定をやり直した。極めて異例の事態だ。
統計を巡っては、かってこんなことがあった。
終戦翌年、首相に就いた吉田茂は食料不足に直面し、農林省の計算に基づいて450万トンという莫大な輸入がなければ、餓死者が出る恐れがあるとして連合国軍司令部(GHQ)に多量のコメ輸入を要請した。
実際には70万トンで済み、マッカーサー元帥に数字のずさんさを責められると、吉田は「戦前にわが国の統計が完備していたならば、あんな無謀な戦争はやらなかっただろうし、またやれば勝っていたかもしれない」と反論して笑い話になったという。
吉田の著書「日本を決定した100年」(中央公論)から引いた。
吉田は農林省の過大な見積もりは、食糧危機を切り抜けたい気持ちが働いたようだと気遣っているが、そこは、自分に都合のよう数字だけを公表する、戦争中からの名残も感じ取っている。」と指摘した。
最後に筆者は、「統計の手法を偽り、不正確な数字を基に政策決定するならば、国民の命を危険にさらすこともありうる。それほど統計数字が持つ意味は重い。
筆者が悪然としたのは二度の政権交代を経ても不正はただせず、10年以上も続いてことだ。時計の操作は官僚の習い性だとしても、政治が見過ごしてきたのは、行政権力の暴走許す危険な兆候だ。底流にあるのは国会の行政監視機能の劣化だろう。
統計不正という深い闇に光を当てて、再発を防ぐには、政府に対応を促すだけでなく、国会が国民から負託された国政調査と行政監視の権能を強め、駆使するしかない。
安倍政権という一政権だけの問題に終わらせてはならない。国権の最高機関としての存在意義が問われる局面だ。」として締めくくった。
読んで勉強になった。
「不正発覚を機に、政府が56の基幹統計を調べたところ、半数近い23で計34件もの不適切処理事案が見つかった。」とのこと、
「毎月勤労統計の不正では、一度決めた2019年度予算案の閣議決定をやり直した」とのこと、
「終戦翌年、首相に就いた吉田茂は食料不足に直面し、農林省の計算に基づいて450万トンという莫大な輸入がなければ、餓死者が出る恐れがあるとして連合国軍総司令部(GHQ)に多量のコメ輸入を要請した。実際は70万トンで済み、マッカーサー元帥に数字のずさんさを責められた」とのこと、
「吉田は、「戦前にわが国の統計が完備していたならば、あんな無残な戦争はやらなかったろうし、またやれば勝っていたかもしれな」と反論して笑い話になった」とのこと、
「統計の手法を偽り、不正確な数字を元に政策決定するならば、国民の命を危険にさらすこともありうる」とのこと、
「筆者が愕然としたのは二度の政権交代を経てもふせいはただせず、10年以上も続いたたということだ」とのこと、
等々を知ることができた。
筆者は、「統計不正という深い闇に光を当て、再発を防ぐには、政府に対応を促すだけでなく、国会が国民から託された国政の調査と行政監視の権能を強め、駆使するしかない。」と指摘する。その通りだと思った。その上で、国会の調査権を有効に生かすためには、国会と国会議員に専門スタッフを付ける必要があると思った。
なぜかならば、議員は選挙に当選しただけで、財務、法務、統計等々に必ずしも造詣があるわけではないからだ。