米中の二分論 超えるために言葉の力を< 敵か味方か、強者か弱者か?単純な議論の土俵に引きずり込まれないためには、自らの価値を語り、他者の共感を獲得していく言葉が必要だ!>
2018年 05月 13日
4月12日付朝日新聞社説下に、「ザ・コラム」という欄がある。筆者は、編集委員・吉岡桂子氏だ。
今日は、この筆者に学ぶことにした。
まず筆者は、「カーキ色の迷彩服に身を包んだ特殊部隊8人が、こぶしを突き合わせる。腕には、中国の赤い国旗が貼り付けられている。
「勇者は恐れず、強者は無敵!」
中国で大ヒットを続けるアクション映画「紅海行動 Operation Red See」の決めせりふだ。
2015年の中東イエメンの内戦で逃げ遅れた中国人と外国人の救出作戦に基づくフィクションである。モロッコを含む大掛かりなロケには、人民解放軍が全面的に協力した。海原には、現役の軍艦も登場する。
最後に一瞬、映像が南シナ海に切り替わる。
「中国の領海です。すぐに出て行きなさい」。中国軍が呼びかける。領有権を争うベトナムでは上映が打ち切られた。
気にはかけまい。中国人の愛国意識は十分に鼓舞し、商業的にも大して響かない。
全校人民代表大会が開かれていた3月、北京の映画館で見た。隣の若い女性たちは、
命を惜しまず外国人をも救う中国軍の奮闘ぶりにすすり泣いていた。私は、南シナ海の無理やりな展開に吹き出しつつも、鄧小平の時代の終わりをつくづく感じた。
国家主席の任期制の撤廃に象徴される、個人への権力集中の弊害を避ける知恵だった集団的指導体制の終焉だけではだけではない。
鄧が唱えた外交戦略「韜光養晦」(能力をひけらかさず力を蓄える)はもう、人々の心をつかまない。70年前の戦争の勝利を描いた「反日映画」では飽き足らない。
なんてったって「強者は無敵」は、気持ちいい。
ただ、在外の自国民保護はしばしば、戦争の理由にされる。日本が出兵した日清戦争も、そうだった。危うさが募る。」と切り出した。
続けて筆者は、「同じイエメンの救出作戦を素材に昨夏、更にヒットした映画がある。「戦狼 Wolf Warrior 2」。1億5千万人を動員し、売り上げは中国市場最高を稼いだ。
米映画「ランボー」の中国版とも呼ばれる。大国意識をかきたてる。
アフリカ某国からの救出劇。米国人俳優が演じる反政府軍の雇い兵と元人民解放軍の特殊部隊の主人公が終盤、決闘する。
「世界には強者と弱者がいる。おまえらは列島民族はいつまでも弱者のままだ」。言い放つ敵を、主人公は打ち負かす。
「そしてつぶやく。「それは昔の話さ」
中国製のスマホを用いた動画配信・ドローン、食品、酒、中国資本の病院。中国の富と力があふれる。主人公は現地の人に愛され、米国人の女性医師と心を通わせる。
国連による秩序を重視し、要に座る。反政府軍のリーダーは強調する。
「中国は国連安全保障理事会の常任理事国、政権奪取後には承認を得なければならない相手だ。中国人を殺してはならない」
中国軍幹部も、国連の了承抜きには「発射できない」。中国の国旗に、「UNマークが並ぶ。
国家の姿を自国民にどう見せたいか。
国際社会でどう見られたいか。ガンガン伝わる。ラストシーンで中国のパスポートが大写しになる。「危険に遭遇してもあきらめるな。後ろに強大な祖国がいる」。スクリーンいっぱいに文字が刻まれていく。
もちろん、皆が熱狂しているわけではない。嫌悪する人もいる。息子の中学の宿題として親子で見た友人は冷めていた。
「国家を信用していない中国人は多い。民衆を見捨てるだろうという根強い疑念に対する言い訳する映画に見えた。」
そんな彼女ですら、国際社会に対する不満を漏らした。
「中国は何をやってもまともに評価されない」。
たとえば、愛国主義的プロパガンダ映画だと外国人は嘲笑するが、ハリウッドだって強い米国が敵をやっつけ、米国人が星条旗に涙する作品がたくさんある。とも。「何が違うの?」」と指摘した。
最後に筆者は、「正義の米国はソフトパワー。邪悪な中国はシャープパワー。こうした2分論は米国「第一」主義の言葉を吐くトランプ政権のもとでは空しく響く。敵か味方か、強者か弱者か、単純な議論の土俵に引きづりこまれないためには、自らの価値を語り、他者の共感を獲得していく言葉が必要だ。
身近な相手に言葉を尽くして丁寧に説明する意味を解さない者は、国際社会の大スクリーンでも大根役者のままだろう。米中の両大国の矛盾は今後、激しさを増すはずだ。脇役こそ、一言一言の力が問われる。」として締めくくった。
読んで勉強になった。
筆者は、「70年前の戦争の勝利を描いた「反日映画」では、飽き足らない。なんたって「強者は無敵」は気持ちいい。 ただ、在外の自国民保護はしばしば、戦争の理由にとされる。日本が出兵した日清戦争もそうだった。危うさが募る」とのこと、
「国家の姿を自国民に、どう見せたいか。国際社会でどう見られたいか、がんがん伝わる。ラストシーンで中国のパスポートが大写しになる。「危険に遭遇してもあきらめるな。後ろには強大な祖国がいる」。スクリーン一いっぱい文字が刻まれていく。」とのこと、
等々を教えてもらって、一党独裁の中国が一日も早く「民主化」しないと、世界中が危うい事態になりかねないと思った。
また筆者は、「身近な相手に言葉を尽くさない者は、国際社会の大スクリーンでも大根役者のままだろう」との指摘
「米中の両大国の矛盾は今後激しさを増すはずだ。脇役こそ一言一言の力が問われる」と指摘、等々この指摘の通りだと思う。
そのとき、世界を唸らせる「名せりふを吐く」「千両役者」が、日本から是非誕生してほしいと、切望している。