飛び交った声 明日からの言葉 <言葉が多すぎる/というより/言葉らしきものが多すぎる/というより/言葉と言えるほどのものが無い!!(茨木のり子「この賑々しきなかの」という詩の冒頭)>
2017年 11月 03日
10月22日付朝日新聞朝刊3面に、「日曜の想う」という欄がある。筆者は、編集委員・福島申二氏だ。
今日は、この筆者に学ぶことにした。
まず筆者は、「あの詩人のお宅は、さっぱりと知的な空気をまとっている。私のご近所といえるところに家はあって、たまに散歩しながら前を通ることがある。
詩人は11年前に亡くなられ、家屋は少し古びたけれど佇まいはそのままだ。通りかかるといつも、彼女の詩が一つ二つ胸の底から浮かんでくる昨日あたり散歩に出かけていれば、浮かんできたのはこの一節だったかもしれない。
言葉が多すぎる/というより/言葉らしきものが多すぎる/というより/言葉と言えるほどのものが無い
お分かりの人もあろう。茨木のり子さんである。この「賑々しきなかの」という詩の冒頭は、きのうまでの選挙運動を言っているようにも見える。何のための選挙か納得のいかないまま、自賛と甘言の呼号が頭上を飛び交ったように感じたひとは、少なくなかっただろう。
あるいは、胸に浮かぶのはこの詩句だったかもしれない。
ひとびとは/ 怒りの火薬をしめらせてはならない/ まことに自己の名において立つ日のために
この3行を含む詩には「内部からくさる桃」という刺激的な題が与えられている。感情に任せて荒れ狂う怒りではない。憎悪ともむろん違う。この3行にこもる意味は、おそらく「忘れない」ということと同義だ。
なぜなら、忘れるのをじっと待っている人たちがいるから。」と切り出した。
続けて筆者は、「内なる火薬を湿らせないでいるのは簡単ではない。
例えば原発一つとっても、進める側は、政治家も役人も、それを仕事として税金から報酬をもらう。ところが異議を唱える市民の多くは、それで食べてはいかれない。日々の暮らしに追われながらやむにやまれぬ気持ちを行動の支えにしている。立場が違いすぎるのだ。
同じことを世論を二分して成立した安保法などにもいえる。世の中はあわただしい。大きなニュースが飛び込めば、ひとつ前のできごとはたちまち後景に退いていく。
そのうえ今は目先の愉楽や便利さに工夫が凝らされて、いきおい一時の感情にとどまりがちだ。そしてじきに忘れられ、政治家は高を括ることを覚えていく。
310万人が没した先の戦争さえ例外でなくなっている。戦後72年、日本が抱いてきた戦争という者への「怒りの火薬」は、ここに来て急速に湿ってきたようだ。
とりわけ政治の担い手から、歴史の井戸に深くつるべを下ろす謙虚さが失われているように思われる。
1926(大正15)年生まれの茨木さんが代表作につづっている。
私が一番きれいだったとき/…男たちは挙手の礼しか知らなくて/きれいな眼差しだけ残し皆発っていった
東京に冷たい雨の降ったきのうは74年前に、当時のニュース映像で良く知られる雨中の学徒出陣壮行会が行われた。敗戦のとき茨木さんは19歳。この人の詩は、戦争を知る世代ゆえの「勇ましさ」への懐疑を、選び抜いた言葉で私たちに投げかけている。」と教えてくれる。
最後に筆者は、「さて今夜、テレビ局は特別番組をずらいと並べて衆議院選の開票を待つ。
候補者1180人は当と落に振り分けられ、国政に新しい勢力図が描かれる。
どのような図になろうと、あすからの政治にまともな言葉がほしい。
空疎な「言葉らしきもの」はいらない。
「言葉と言えるほどのものがない」などは論外だ。
私たちもまた、言葉を巡る政治家の怠惰や横着にならされてしまってはいけない。
主権者として、為政者の思い上がった言葉には、愚か者を諭す眼差しを向けなくてはならない。
9年前、米国の大統領選に勝利したオバマしはこう述べたものだ。
「私を支持しなかった皆さんには票を頂けなかったが、皆さんの声に耳を傾けます 。私は皆さんの大統領になるつもりです」
分断をあおる言葉なら、立場や意見のことなるものどうしが肩を組んで歩くの可能にするのも言葉である。それを私たちは「民主主義」となずけた。」として締めくくった。
読んで勉強になった。
「人々は/
怒りの火薬をしめらせてはならない/
まことに自己の名においておいて立つ日のために
この3行を含む詩は「内部からくさる桃」という刺激的な題が与えられている。」とのこと、
「1926年(大正15)年生まれの茨木さんが代表作につづっている。
わたしが一番きれいだったとき/
・・・男たちは挙手の礼しか知らなくて/
きれいな眼差しだけを残し皆発っていった
東京に冷たい雨の降った昨日は74年前に、当時のニュース映像でよく知られる雨中の学徒出陣壮行会が行われた日だった」とのこと、等々を知ることが出来た。ちなみに、74年前のこの日、私は誕生して六カ月だった。