「わが闘争」のポスト真実 < 根拠のない差別や憎しみを蔓延させた果てが、ホロコーストと大戦による世界の荒廃だった!同じ思い込みが、日本軍の大陸での蛮行につながったのでは!??>
2017年 03月 04日
2月28日付東京新聞朝刊13面に、「論説委員のワールド観望」という欄がある。筆者は、論説委委員・熊倉逸男氏だ。今日はこの筆者に学ぶことにした。
まず筆者は、「戦後ドイツでダブーだったヒトラーの著書「わが闘争」が注釈付きで出版され、ベストセラーになった。
発行当初は、ネオナチをあおりかねないなどの懸念があったが、今のところ杞憂だ。主に政治や歴史に興味を持つ人たちに読まれているという。
日本では文庫本の翻訳があるが、ドイツでは読めなかった。
ヒトラーの著作権を持っていた南部バイエルン州が許可しなかったのに加え、原文だけの復刊はナチス的言動を禁じる民衆扇動罪違反の疑いがあると、司法当局が判断していたためだ。
著作権が2015年末に切れ、独政府と州が出資する現代史研究所が一年前、注釈付きで出版した。」と教えてくれる。
さらに筆者は、「2巻で計約2千ページ(約7千2百円)する大著だが、版を重ね8万5千部を売り上げた。
「わが闘争」は、人種差別を正当化し、ユダヤ人排斥を主張する。
これに対し、注釈は3千5百以上に上る。
「民族が、自然から与えられた血統に根付く存在の特徴に注目しようとしないなら、この世での存在を失うことに、文句は言えない」との原文には、「ソ連への電撃侵攻失敗し軍事内的危機に陥った時、ヒトラーは「“ドイツ民族が自己保存を貫く用意がないのなら、滅びるべきだ”といった」と、自らの価値観を、ドイツ人の命よりも優先する考え方だったと注釈し、注意を喚起した。
「失われた血統の純血性内なる幸福を破壊し、人間を永遠におとしめる」との表現は、「異民族間の混血についてのこのような主張に対し、科学者は当時から間違いと指摘していた」と、科学的根拠がないことを指摘した。
ヒトラーの言い分をうのみにしないよう編集し、「わが闘争」の主張が、根拠のないものだらけだったことを明らかにしている。
ベルリンの日刊紙ターゲス・シュピーゲル(電子版)は「「わが闘争」は歴史になったが、過去にあった(ヒトラーによる)扇動に対してだけでなく、ヒトラー的価値観との戦いは常に進めていかなければならない」と指摘する。」と教えてくれる。
最後に筆者は、「根拠のない主張はヒトラーで終わったわけではない。
今や、「ポスト真実」として流行語になるほど、さかんになっている。
英国のEU離脱の是非を問うた国民投票で、離脱派は「EUに毎週3億5千万ポンド(約476億円)を払っている」
「移民が職を奪い、社会保障費を食い物にしている。」などの虚説を垂れ流した。
トランプ大統領は、選挙中にデマを連発、就任後はテロ対策にイスラム国7か国からの入国を禁じる大統領令に署名した。7か国出身者によるテロは近年、起きていない、にもかかわらずである。
根拠のない差別や憎しみを蔓延させた果てが、ホロコーストと、大戦による世界の荒廃だった。
今こそ、「わが闘争」を学ぼう。
ポスト真実の恐怖を、反面教師とするために。」として締めくくった。
読んで勉強になった。
「「民族が、自然から与えられる血統に根付く存在の特徴に注目しようとしないなら、この世での存在を失うことに文句は言えない」との原文には、
「ソ連への電撃侵攻が失敗し軍事的危機に陥った時、ヒトラーは、“ドイツ民族が自己保存を貫く用意がないのなら、滅びるべきだ”と言った」と、自らの価値観を、ドイツ人の命よりも優先する考えだったと注釈し、注意を喚起した」とのこと、
「「失われた血統の純血性は内なる幸福を破壊し、人間を永遠におとしめる」の表現には、
「異民族間の混血についてのこのような主張に対しては、科学者は当時から間違いを指摘していた」と科学的根拠がないことを指摘した」とのこと、
「ヒトラーの言い分をうのみにしないよう編集し、「わが闘争」の主張が、根拠のないものだらけだったことを明らかにしている」とのこと、等々を知ることができた。
2014年の年末から2015年の年始にかけて、ベルリン一人歩きをし、ヒトラーの館跡の地を三回、三日訪れ大地を何回も踏みしめてきた。幸いなことに、その周りでヒトラー崇拝者らしき人には一人も出会わなかった。中学生くらいの子供たちの団体が説明を受けているのを、数回みた。その場所は掘り返され、今は駐車場と空き地になっていた。空き地にそびえるポプラの大木が一本そびえたっていた。その大木が、歴史を見てきたのではないかと思った。日本に帰ってきて、ポプラの大木を見るたびに、ヒトラーの館跡を思い出す。
ただ、日本軍が大陸で行った蛮行も、国家ぐるみの同じような勘違いの優越感に基づいて、行われたのではないか、と思った。