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by sasakitosio

本書の概要 「21世紀の資本」学習ノート⑯

 はじめにの中、36頁の「本書の概要」という項目を学習することにした。
 著者は「この先の本書は全16章で、それが4部に分かれる。第Ⅰ部「所得と資本」は2章構成で、本書で何度も使われる基本的な概念を紹介する。細かく言うと、第一章では国民所得、資本、資本/所得比率の概念を紹介し、世界の所得分布と産出がどう推移してきたかを大ざっぱに描き出す。
 第2章はもっと詳細な分析で、人口増加率と産出の成長率が産業革命以来どう推移したかを示す。この第Ⅰ部には目新しいことは何も書いてないのでこうした概念や18世紀以来の世界経済の成長史を知っている読者は、ここを飛ばしてすぐに第Ⅱ部にとりかかってかまわない。
 第Ⅱ部「資本/所得比率の動学」は4章構成で、資本/所得比率の長期的な推移の見通しと、21世紀に国民所得が労働と資本の間でどう分配されるかを世界全体で検討する。第3章は18世紀以来の資本の変容を切る。長期的なデータが最もそろっているイギリスとフランスの例から始めよう。第4章ではドイツと米国を検討する。第5章と6章は分析の地理的な範囲を情報源の許すかぎりの全世界に広げ、こうした歴史的体験すべてから教訓を引き出すことで、今後数十年にわたる資本/所得比率の動向、および資本と労働の構成比率を予想できるようにしよう。
 第Ⅲ部は「格差の構造」は、全6章から成る。第7章は、労働からの所得の分配による格差がどのくらいで、資本所有の格差と資本所得による格差が実のところどのくらいなのかという規模感を読者に理解していただくものだ。第9章と10章は、その分析を歴史的データのそろっている(WTIOにデータのある)すべての国に拡大し、労働に関わる格差と資本による格差を分けて検討する。第11章は、長期的にみた相続財産の重要性の変化を検討する。そして最後に第12章は21世紀最初の数十年における世界的な富の分配見通しを検討する。
 これまでの3部は、事実を確立してそうした変化の原因を理解しようとするものだった。4章構成となる第Ⅳ部「21世紀の資本規制」の狙いは、第Ⅰ部から第Ⅲ部までから得られる規範的、政策的な教訓を引き出すことだ。第13章は、現在の状況に適した「社会国家」がどんなものかを検討する。第14章は、過去の経験と最近の傾向に基づいて累進所得税の見直しを提案する。第15章は、21世紀の条件に対応した資本への累進課税がどんな形になりそうかを描き、この理想化されたツールを、政治プロセスから生じそうな他の各種規制と比べてみる。そうした規制としては、ヨーロッパにおける富裕税から、中国における資本規制、米国での移民制度改革、多くの国での保護主義復活などといろいろある。第16章は、目下重要となりつつある公的債務の問題と、それに関連して自然資本が劣化しつつある時代における公的資本の最適な蓄積という問題を扱う。
 最後にひと言。1913年に「20世紀の資本」という本を刊行するのはかなり無謀だっただろう。フランス語で2013年、英語で2014年に刊行された本書を「21世紀の資本」と名付けたことについては、読者のご寛容をお願いするものだ。2063年や2113年に資本がどんな形を取るかについて、自分が全く予測できないことは十分に自覚している。すでにのべたように、私はこれからの本書でしばしば、所得と富の歴史は常に根深く政治的であり、混乱に満ち、予想外のものだと示すことになる。
この歴史がどう展開するかは、社会がどのように格差をとらえ、それを計測して変化させるために、社会がどんな政策や制度を採用するかに左右される。今後数十年の間に、そうしたものがどう変わるかを予見できるものは誰もいない。それでも歴史の教訓は有用だ。というのもそれは、これからの1世紀でどんな選択に私たちが直面するか、そしてそこにどんな力学が作用するかを、もうちょっとはっきり見通すのに役立つからだ。本書は論理的に言えば「21世紀の夜明けにおける資本」という題名をぬすべきだっただろうか、その唯一の目的は、過去からいくつか将来に対する慎ましい鍵を引き出すことだ。歴史は常に自分自身の道筋を発明するので、こうした過去からの教訓がどこまで実際に役立つかはまだ分からない。私はそれを、その意義をすべて理解してなどと想定することなしに、読者に提示しよう。」としている。
 読んで勉強になった。
 本書の全体の構成が分かったことはもちろんだが、筆者は「その唯一の目的は、過去からいくつか将来に対する慎ましい鍵を引き出すことだ。」としている。筆者の謙虚な人柄がしのばれる。
 また、「歴史は常に自分自身の道筋を発明する」との指摘は、歴史から学ぶ者にとっては、きわめて大切な視点だと思った。
by sasakitosio | 2015-07-12 15:09 | 「21世紀の資本」学習ノート | Trackback