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by sasakitosio

福島第一原発事故4年 「願望主義」復活させるな

 3月7日付朝日新聞朝刊社説下に、「ザ・コラム」という欄がある。筆者は、編集委員・上田俊英氏だ。
 今日はこの筆者に学ぶことにした。
 まず筆者は、「東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が起こって、4年が経つ。昨春から福島に住んでいて日々募るのは「これが先進国なのか」という思いである。避難を続ける福島県民は少なくとも12万人にのぼる。避難指示区域を南北に貫く国道6号やその周辺を車で通れば、朽ちかけた家々、おびただしい数の除染廃棄物を入れた袋、野ざらしのがれきなどが、いやでも目に入る。朝日新聞社が福島放送と共同で先日実施した県民への世論調査によると、復興への道筋が「まったくついていない」「あまりついていない」と答えた人は。あわせて69パーセントにのぼった。当然である。
 被災地でそんな深刻な状況が続くなか、これから日本の電気をなにで、どれくらいまかなっていくかを検討する経済産業省の小委員会が、1月30日に始まった。
 「日本の(原子力の)安全規制体系は国際標準になったと思います」
 「世界最高クラスの安全基準が策定されたということを、しっかり国民にご理解をいただくようにしていただきたいと思います」
 議事録に、経産省OBの出席者のこんな発言がある。私は愕然とした。
 日本では、事故が起こったときの避難計画はいまも国の安全審査の対象外だし、テロ対策も遅れている。しかも、日本は世界有数の地震大国だ。基準がたとえ「世界最高クラス」だとしても、それで十分なのか。国民は疑っている、」と切り出した。
 つづけて筆者は、「発言はただ「そうであってほしい」という「願望」だろう。
 日本の原子力政策で語られるのは関係者の「願望」だ。私は原子力を長く取材してきて、そう感じることが何度もあった。こうした「願望主義」は日本の原子力界を、その黎明期から支配してきた。
 物理学者として日本の原子力開発と生涯かかわった田島英三さん(1913-98)の自伝「ある原子物理学者の生涯」(新人物往来社)が、手元にある。田島さんは戦時中、理化学研究所で原爆開発研究にかかわり、戦後は原子力委員や初代の原子力安全委員などを歴任した。
 原子力委員だったとき、安全の専門家を常勤職員に加えるよう提案し、受け入れられないと、政府のやり方に抗議して委員を辞任した。原子力の安全と原子力行政の改革に、亡くなるまで心を砕き続けた。
田島さんが原子力委員になったのは72年。政府はこの年、原子力開発の「長期計画」を5年ぶりに改定する。福島第一原発1号機が運転を始めた翌年で、日本ではまだ5基の原発しか動いていなかった。
 新たな計画は、85年度6千万キロワット程度、90年度には1億キロワット程度を「原子力発電でまなうことが要請される」とうたった。
 自伝に、この計画に対する田島さんの思いがつづられている。
 「このような計画はどう考えても達成できるとは思えないし、この長期計画に対しては当然原子力委員会が責任を負うべきものと考えたので、委員会の席上でこの計画の根拠を尋ねたところ、「これは努力目標です」という答えがアッサリと帰ってきた。私が唖然とした。信じられないことであったが、これは日本の官庁の常識らしく、まともな実現可能予測と受け取る方が滑稽なのかもしれないと思った」
 日本の原発はいま48基で、総発電設備容量は4426万キロワット。「滑稽」だったのは、政府の計画の方である。」と指摘した。
 さらに続けて筆者は、「政府みずから「願望主義」を戒めたことが、少なくとも1度はあった。2000年度版「原子力安全白書」である。
 白書は、核燃料加工会社ジェー・シー・オー東海事務所(茨城県東海村)で99年に起こった臨界事故を受けてまとめられた。この事故で同社の社員3人が大量の放射能を浴び、2人が死亡した。「原子力は絶対に安全」という「安全神話」に依存した原子力関係者の姿勢に批判が集まった。
 白書は「誤った「安全神話」がなぜつくられたのだろうか」と問う。そして、要因として考えられるものとして
「実績に対する過信」
「過去の事故経験の風化」
「絶対的安全への願望」――などをあげた。
しかし、戒めは忘れ去られていく。」と教えてくれる。
 最後に筆者は、「原子力規制委員会の田中俊一委員長は2月18日の記者会見で次のように語った・
 「技術は100%安全ですと言ったとたんに間違い」
 「言ったとたんに安全性を向上させる努力を放棄させることになる」
 福島第一原発事故で、私たちはそのことを十分まなんだ。事故収束も、復興への道筋もまだ見えていない。原子力の願望主義を復活させてはならない。」と締めくくった。
 読んで勉強になった。田島英三さんに自伝「ある物理学者の生涯」があることを知った。そして、専門家・有識者に普通の人間の感覚を持った人がいたことにホットした。
 また、2000年原子力白書の中に「安全神話がなぜつくられたのだろうか」と自問し、「絶対的安全への願望」があることも知った。願望した状態が数十年続くと、人間は多くの場合「それが真実だと信じる」動物らしい、ということに気付かされた。
 さらに、原子力規制員会の田中俊一委員長の「技術は100%安全ですと言ったとたんに間違い」「言ったとたんに安全性を向上させる努力を放棄することになる」との2月18日の記者会見での発言は、福島の原発事故を見た以降は、事故からの原状回復が人間の寿命をはるかに超えた「原発」は即刻廃止した方がいいというふうに聞こえるが?
by sasakitosio | 2015-03-14 06:25 | 朝日新聞を読んで | Trackback