太陽光パネル課税の愚 時代遅れの化石燃料びいき< ひとつはお金だろう?(化石燃料業界の大富豪で、共和党に巨額の献金をする)コーク兄弟にとって喜ばしいことは、共和党の資金集めによいことなのだ?>
2018年 02月 16日
2月3日付朝日新聞朝刊15面下に、「クルーグルマン コラム」という欄がある。
筆者は、米ニューヨーク市立大学教授・クルーグマン氏だ。(NYタイムズ、1月26日付抄訳)
今日はこの筆者に学ぶことにした。
まず筆者は「米大統領候補だったころのトランプ氏は、いつも貿易問題を取り上げ、再交渉や外国人が米国人の仕事を奪うのをやめさせ、偉大な米国を取り戻すのだと論じていた。
しかし、就任1年目は、この点に関してはほとんど何もしていない。おそらく米実業界が彼に知らせるのに成功したのだろう。
彼らは、米国が北米自由貿易協定(NAFTA)をはじめとする貿易協定を守ることを前提に多額の投資をし、もしトランプ氏がこれらを破棄すれば失うものが大きいのだと。」と切り出した。
続けて筆者は、「今週、トランプ氏はついに洗濯機と太陽光パネルに関税を課した。
前者は、戦略的な目的があるというよりも、強硬な姿勢を打ち出すためだろう。
一方で後者は、トランプ政権全体に通じるビジョンの重要な要素に合致している。
というのは、これこそ正真正銘の汚くて時代遅れになったものたちの政権だからだ。
洗濯機に関しては、新たな関税の法的根拠となっているのは、輸入の増加により米国の産業が損害を受けるとした米国際貿易委員会(ITC)の調査結果である。
「損害」と言う定義はちょっと特異だ。
米国内の産業は「生産設備の著しい休止状態に追い込まれてはいない」し、「これまでに目立った失業や不完全就業は見られない」ことを認めた。それにもかかわらず、2012年から16年の経済成長(そう、トランプ氏がフェイクだと言い張るオバマ時代の急成長のこと)を考えると、生産や雇用はもっと拡大してもよかったはずだとITCは主張する。
太陽光パネル関税はより興味深く、より気がかりだ。なぜなら、失われる仕事の方が、生み出される仕事よりも多いことが確実だからだ。
実は米国は、太陽光パネルの生産からほぼ撤退している。理由が何であれ、この政策によって状況が変わることはないだろう。
洗濯機への関税同様、太陽光パネルへの関税は、突然打撃を受けた産業の一時的な保護を可能にする「避難条項」を使って、適用されている。
「一時的な」という言葉がカギだ。ちまり、保護は持続的ではないので、この関税が長期的な投資を呼びこむことはないし、米国の太陽光パネル産業を復活させることもない。
一方でこの関税は、再生可能エネルギーの急拡大という、米国経済の偉大な成功物語のひとつに水を指すことになる。
つまり、トランプ政権について我々が知るあらゆることが示唆するのは、この政権は、再生可能エネルギーに痛手を与えることが良いことだ、と考えているということだ。
汚くて時代遅れな者たちの政権なのである。
過去10年ほど、エネルギー生産では目覚ましい技術革命があった。その革命の一環であるフラッキング(水圧破砕)技術の普及で、天然ガスが安価にかつ豊富に供給されるようになった。
そして、太陽光や風力発電のコストも驚くほど低下した。
このような代替エネルギー源は、政府から多額の助成金がないと存続しえない、馬鹿げた理想主義的なものといまだに考えている人もいるが、現実的には、従来のエネルギーに匹敵するコスト競争力を持つようになり、なおコストが急速に下がり続けているのだ。
さらに代替エネルギーは大勢の人々を雇用している。全体として、何らかの形で太陽光エネルギー業界に勤めている人は炭鉱労働者の5倍」ほどになっている。
しかし太陽光はトランプ政権高官たりの愛情を全く得ていない。
彼らは、なりふり構わず、汚くて時代遅れなエネルギー源、とりわけ石炭を米国に残そうとしている。再生可能エネルギーを不利に見せようとエネルギー省の報告書を書き換えることまでしたのだ。
彼らは、汚染エネルギーに対するひいきを具体的な政策にすることも試みた。昨年秋、ペリー米エネルギー長官は、石炭火力や原子力の発電所を事実上補助するように無理やり仕向けるルールを作ろうとした。これは実現できなかったが、彼らが何を求めているかが明らかになった。
彼らの観点からすると、太陽光関連の雇用を消滅させることは良いことらしい。」と指摘した。
最後に筆者は、「トランプ氏と仲間たちは、なぜ汚いエネルギーが好きなのか? ひとつにはお金だろう。(化石燃料業界の大富豪で、共和党に巨額の献金をする)コーク兄弟にとって喜ばしいことは米国(もしくは世界)にとって喜ばしくないかもしれないが、共和党の政治資金集めには良いことなのだ。
肉体労働に従事する有権者も一因だ。
彼らは、トランプ氏が石炭産業の雇用を取り戻してくれるといまだに考えている。
(2017年、石炭産業で新たに生み出された雇用は500人だった。そう、500人。米国全体の雇用の0.0003%だ。)
文化的郷愁という側面もある。トランプ氏らは、化石燃料の最盛期を黄金時代として記憶し、かって大気や水の汚染がどんなにひどかったかを忘れてしまっている。また、一種の男らしさの誇示もあるのではないか。
「真の男は太陽エネルギーに浸ってなんぞいないで、ものを燃やすのさ」といった感じだろう。
具体的な動機がどうであれ、トランプ政権は、貿易政策に関する最初の重大な背策で見事なまでにへまをした。
これは保護主義的とすら呼ぶべきはでない。
なぜなら直接的影響として、失われる雇用の方が、生み出される雇用よりもおおいのだから、その上、環境にも悪い。勝ちまくりじゃないか!」として締めくくった。
読んで勉強になった。
「今週、トランプ氏はついに洗濯機と太陽光パネルに関税を課した」とのこと、
「太陽光パネル課税は、より興味深く、より気がかりだ。なぜなら、失われる仕事の方が、生み出される仕事よりも多いことが確実だからだ」とのこと、
「一方でこの関税は、再生可能エネルギーの急拡大という、米国経済の偉大な成功物語の一つに水を差すことになる」とのこと、
「さらに代替エネルギーは大勢の人々を雇用している。全体として何らかの形で太陽光エネルギー業界に勤めているひとは炭鉱労働者の5倍ほどになっている」とのこと、
「(化石燃料業界の大富豪で、共和党に巨額の献金をする)コーク兄弟にとって喜ばしいことは米国(もしくは世界)にとって喜ばしくないことかもしれないが、共和党の政治資金集めには良いことなのだ」とのこと、
「2017年石炭産業で新たに生み出された雇用は500人だった。米国全体の雇用の0.00003%だ」とのこと、 等々を知ることが出来た。
日本の新聞記事で見るのとはまた異なった視点で、トランプ政権のアメリカにおける問題点を知ることが出来た。
トランプ氏の登場でアメリカの存在感が限りなく小さくなった時に、どこの国が取って代わるのだろうか?大いに気になる。いまの安倍政権の率いる日本が、アメリカの穴埋めを出来そうには、とても思えないのが残念だ。