「働き方改革」を問う<資本主義形成期の労働者たちは、働きがいのなくなった労働を問題にしていた!そして今日もなお、同じ問題がとわれている!!>
2018年 02月 15日
2月11日付東京新聞朝刊社説横に、「時代を読む」という欄がある。
筆者は、哲学者・内山節氏だ。
今日は、この筆者に学ぶことにした。
まず筆者は、「18世紀から19世紀にかけてヨーロッパで産業革命がおこり資本主義がうまれて行ったとき、労働者の多くは、この新しい経済と労働の形に批判的だった。当時は長時間労働と低賃金労働が蔓延していた。
だがその頃の労働者たちが書いたものを読むと、批判の軸になっていたのは低賃金や長時間労働ではなかったことがわかる。
誇りを持てない労働、自分を一定の時間の消耗にさらすだけの労働、監視されながら命令にした愚だけの労働のあり方に対して、労働者たちは怒りを持っていたのである。
それは当然であったかもしれない。
なぜなら資本主義が生まれる前の社会では、普通の人々は農民や職人、商人として働いている。いわば自営の仕事をし、一人一人が自分の仕事スタイルを持っていた。その仕事スタイルはそれぞれの考え方や自分が持っている技などからつくられてくるもので、人々は自分がつくりだす労働に誇りを持っていたのである。」と切り出した。
続けて筆者は、「ところが資本主義時代になると、安価に大量生産されてくる工場生産物によって、職人たちは仕事を奪われていった。
仕事を失った職人は、工場で働くようになる。そして務めるようになった企業で感じたものは、
誇りを持てない労働、
人間性を奪われた労働、
働きがいのない労働だったのである。
仕事の帰りに一杯の酒が飲めることと引き換えに、誇りのない、苦痛だけの労働に従事しなければならないのか。
当時の労働者たちは、そんなことを訴える文章をよく書いていた。
現代の人々も同じようなことを感じているのかもしれない。
社会の中では長時間労働が蔓延し、格差社会のもとでの低賃金労働も構造化されている。
だが、それ以上に問題なのは、誇りを持てない労働、働きがいのない労働の広がりである。
自分の労働は、お金と引き換えにおこなう精神的、肉体的消耗に過ぎないと感じている人もいるだろう。
社会に役立っていつかどうかも分からないままに、ノルマや数字に追われる労働をしている。
そんな感覚も今日の労働の世界に広がっている。
現在の労働の問題点は、働きがいのない労働に長時間従事しなければならない事や、働きがいのない低賃金労働が広がっていることにあると言ってもよい。
逆に言えば、労働の中に誇りや楽しみ、働き甲斐を感じられる仕事なら、私たちは少々労働時間が延びても、その仕事をやり遂げようとするものである。
もちろんあまりにも長い労働時間は、よいことではないのだが。」と指摘した。
最後に筆者は、「現在語られている「働き方改革」に、疑問を感じる人はけっこう多い。
その理由は、労働の質を問うてないからである。
労働が働き甲斐のあるものになるためには、自分の仕事に社会的有用性が感じられ、労働の価値を認めてくれる職場や取引先、消費者などとの関係が重要なはずだ。
とすれば、経済の在り方、企業の在り方の改革でなければならないはずである。
そういう根本的な視点をもたずに残業時間を減らせと言っているだけなら、働く側にとっては、残業代が減るだけになってしまう。
資本主義形成期の労働者たちは働きがいがなくなった労働を問題にしていた。
そして今日もなお、同じ問題が問われている。」として締めくくった。
読んで勉強になった。
「現在の労働の問題点は、働きがいのない労働に長時間従事しなければならない事や、働きがいのない低賃金労働が広がっていることにあると言ってよい」とのこと、
「現在語られている「働き方改革」に疑問を感じる人はけっこう多い。その理由は、労働の質をとうていないからである」とのこと、
「労働が働きがいのあるものになるためには、自分の仕事に社会的有用性が感じられ、労働の価値を認めてくれる職場や取引先、消費者などとの関係が重要なはずだ」とのこと、
等々を知ることが出来た。
筆者指摘の通り、働きがいのない労働は苦痛以外のなにものではないかもしれない。
しかし、労働そのものに社会的価値のないものは100%ない、と私は思っている。
ただ、労働の社会的価値を、労働者が自覚できる環境がなかなかつくり出せない現状であることは間違いない。
筆者指摘の通り、労働が働きがいのあるものになるためには、「経済の在り方、企業の在り方」の改革が先に必要なのではないか、と思った。
自営業46年目の自分にとっては、収入が保証されない、労働条件も保証されない「生活」ではあるが、頼りにしてくれる「顧客」があることで、働き甲斐を感じてきた。
働き甲斐は、明るく生きてゆくうえで、この上なく大切なものだと、しみじみ思っている。