所得保障論のジレンマ< 不安定雇用や福祉国家解体を見据えた市場原理派がある?BIを担う社会運動は存在しない??BIの最大の難点は市場経済と代表民主制の建前を見破れない点にある???>
2017年 12月 01日
11月30日付東京新聞朝刊27面に、「本音のコラム」という欄がある。筆者は、法政大教授・竹田茂夫氏だ。
今日は、この筆者に学ぶことにした。
まず筆者は、「1%の超富裕層を見ればわかるように、人々の所得は社会への貢献で決まるわけではなく、歴史の成果の技術水準と社会制度で決まる。我々は等しく過去からの多くの人々のおかげを被っている。」と切り出した。
続けて筆者は、「こう考えれば、各人に同じ所得を保障すべきだとするベーシック・インカム(BI)にたどり着く。
理想形は、定期的な通貨支給、普遍性(資産調査なく全員に)、無条件(就労義務なし)の条件を満たすのが、自由と平等を強調する考え方と、不安定雇用や福祉国家解体を見据えた市場原理派に分かれる。
BIを書名にしたヴァン・パレース氏らの近著(未訳)は、平等派の研究を集約した好著だ。
BIの社会実験の多くは小規模で単発的だが、スイスの国民投票やケニアの12年にわたる実験(極貧の2万6千人が対象)の例もある。」と教えてくれる。
最後に筆者は、「だが、理想と現実の隔たりは大きい。昨年の米大統領選のクリントン候補のようにBIに興味を示す政治家もいるが、選挙公約としては無理だ。
労組は安定収入の正規雇用が主体で、非正規層は団結できず、BIを担う社会運動は存在しない。
BIの最大の難点は市場経済と代表民主制のたてまえを見破れない点にある。
内部から報酬=社会的貢献の虚偽意識を生む。
BIを掲げるファシストが現れたらどうすべきか。」として締めくくった。
読んで勉強になった。
「人々の所得は社会への貢献で決まるわけではなく、歴史の成果の技術水準と社会制度で決まる。我々は等しく過去からの多くの人々のおかげを被っている」との指摘、
「(BI)の理想形は、定期的な通貨支給、普遍性(資産調査なく全員に)、無条件(就労義務なし)を満たすが、自由と平等を強調する考え方と不安定雇用や福祉国家解体を見据えた市場原理派に分かれる」との指摘、
「BIを書名にしたヴァン・パレース氏らの近著(未訳)は、平等派の研究を集約した好著だ」との指摘、
「スイスの公民投票やケニアの12年にわたる実験(極貧の26000人が対象)の例もある」との指摘、
「労組は安定収入の正規雇用が主体で、非正規層は団結できず、BIを担う社会運動は存在しない」との指摘、
「BIの最大の難点は市場経済と代表民主制のたてまえを見破れない点にある。市場は公正とは限らず、内部から報酬=社会的貢献の虚偽意識を生む」との指摘、等々を知ることが出来た。
スイスの国民投票の新聞記事を読んで、ベーシック・インカム」って、いいな、と思ったことがある。
そしてこのたび、筆者の指摘で、その成り立ちと問題点を知ることが出来た。
とりわけ、「不安定雇用や福祉国家解体を見据えた市場原理派がある」との指摘、
「BIの最大の難点は市場経済と代表民主制のたてまえを見破れない点にある」との指摘、
「労組は安定収入の正規雇用が主体で、非正規層は団結できず、BIを担う社会運動は存在しない」との指摘、は「BI」をいいなと思う人たちにとって、刺激的な指摘である、と思った。
筆者の指摘を踏まえて、自由で平等で持続的に発展する社会を目指して、BIの実現を追及したいものだ、と思った。