人の遺伝子操作 確かな哲学と規制整備を <ゲノム編集で、なぜ人は戦争するのか、人はなぜ信じるのか、ヒトの祈りはなぜ伝わるのか、てなことを解明してほしい!>
2017年 05月 22日
5月18日付朝日新聞朝刊15面に、「科学季評」という欄がある。筆者は、京都大学総長・山極寿一氏だ。今日はこの筆者に学ぶことにした。
まず筆者は、「3年後の東京五輪に、遺伝子操作で協議に必要な筋力だけを増強させたアスリートが登場するのも、夢物語と片付けられない。
欧米や中国での人体への応用を見ていると、そう感じる。
そんな技術をめぐる議論が、国内では混乱の様相を呈している。
先月、日本人類遺伝学会などの学会が共同で、ゲノム編集で人間の受精卵を操作する基礎研究について、内容や研究体制などを個別に審査する委員会を立ち上げた。
ところが、1週間後には解散することになったと報道された。
学会側は「国の意向で審査体制を築いたのに、学会が自主的にやっていると受け取られているため」と説明している。
国の支援が明確でなく、責任意識が薄いことに学会側が不満を募らせたのである。
しかし、このままではゲノム編集技術が規制なしに応用されたり、基礎研究が進まなかったりする恐れが生じる。
ゲノム編集とは、酵素を用いてDNA鎖を切断し、そこに別のDNAを組み入れる遺伝子操作の技術。
効率の高いゲノム編集技術を発見した独マックス・プランク感染生物学研究所のシャルパンティエ所長は、今年、日本国際賞を受賞した。
すでにイネやトマトなど栽培植物、豚などの家畜,マダイやトラフグなどの魚に応用され、成長が早く収量が多いものが作り出されている。
筋ジストロフィーや白血病など遺伝性の難病治療や、寄生虫の遺伝子を組み換えて感染症を根絶する効果も期待されている。
2014年には、中国で世界初の遺伝子組み換え猿が誕生し、15年からはやはり中国で,ヒトの受精卵の遺伝子操作が試みられ、昨年は臨床応用に向けた研究も始まった。
英国でも昨年から人の受精卵にゲノム編集が使われることになった。」と切り出した。
続けて筆者は、「ヒトの受精卵や生殖細胞にゲノム編集の技術が応用されれば、親が望むような特徴をを持つ子供を作ることができる。
日本では国の生命倫理専門調査会が、この技術でのヒトの受精卵と生殖細胞の遺伝子改変を禁止している。
ヒトの生き方に新しい可能性を開く夢の技術だが、命をめぐる仕組みを根本から変えかねない危険をはらむ。
ゲノム編集や再生医療技術が急速に進む背景には、人類の進化の歴史が深くかかわっている。
人類に遺伝的多様性が低いため、数多くの遺伝的疾患を抱えることになったのだ。
世界人口は70億を超えるが、遺伝子をたどると1万人程度の共通のご先祖様に行き着く。
祖先がアフリカ大陸を出てユーラシアやオーストラリア、南北アメリカ大陸へ広がる前に、一旦極端に人口が減った。
人間に最も近縁なチンパンジーはアフリカに30万頭いるが、10万頭から枝分かれした。
祖先の母集団が十分に大きければ、交配を繰り返す中で弱い遺伝子は淘汰されるが、小さいと悪影響を持つ遺伝子が淘汰されずに残る可能性がある。
そのため、現代人を悩ませるアルツハイマー、リュウマチ性関節炎、ぜんそく、子宮内膜症、心筋梗塞、熱帯性マラリヤ、HIVなどに、チンパンジーは縁がない。」と教えてくれる。
最後に筆者は、「遺伝子を改変する技術は、こうした疾患に対処できると期待される。
ビジネスと結びついて巨大な富を生み出し、国の財政を支える基盤にもなりうる。
科学技術だけでなく、人文社会学的な見地からも生命倫理についての考え方を早急にまとめ、規制を設ける必要がある。
日本学術会議は03年、「生命科学の全体像と生命倫理」という声明を出した。
その中で①被験者への有害事象の増加②遺伝的あるいは経済的に恵まれた人たちが陥りやすい優越感③未来世代に対する責任の増大④臓器細胞移植などのための人体組織の商品化⑤急速に進むグローバル化が
招く価値対立の先鋭化や価値観の強制などを、生命倫理上の新たな問題として指摘した。
21世紀に生きる私たちは、知らず知らずのうちに遺伝子差別による優生思想の復活、「いのち」の操作や「こころ」の破壊、クローン人間の誕生、生態系の不調和といったことにつながらないよう、最大限の注意を怠ってはならないと警告している。
この生命倫理に基づいて作り出されたのが、京都大学の山中伸弥教授が発見したips細胞(人工多能性幹細胞)である。
受精卵や生殖細胞に手を付けずに、体細胞からさまざまに分化できる性質を持つ幹細胞をつくりだし、ヒトの臓器を再生させることを目的としている。
すでに、60歳以上の最大の失明原因である加齢黄斑変性症の治療に用いられ、認知症や脳神経変性疾患の治療法が、格段の速さで進む期待が高まっている。
一方で、その応用課程でヒトの生殖細胞や脳神経細胞が形成される可能性も否定できない。
ゲノム編集や再生医療技術は、治療だけではなく、ヒトの命の始まりや遺伝的シナリオに手を加える可能性を広く持つ。
地球に誕生した命のつながりを恣意的に変えることが私たちに許されるのか。
人類が神の領域に踏み込む技術を持った今、確かな哲学と倫理の創出が求められている。」として締めくくった。
読んで勉強になった。
「ゲノム編集とは、酵素を用いてDNA鎖を切断し、そこに別のDNAを組み入れる遺伝子操作の技術。」とのこと、
「効率の高いゲノム編集技術を発見した独マックス・プラング感染生物学研究所のシャルパンティエ所長は、今年、日本国際賞を受賞した」とのこと、
「既にイネやトマトなど栽培植物、豚などの家畜、マダイやトラフグなどの魚に応用され、成長が早く収量が多いものが作り出されている」とのこと、
「筋ジストロフィーや白血病など遺伝性の難病治療や、寄生虫の遺伝子を組み換えて感染症を根絶する効果も期待されている」とのこと、
「2014年には、中国で世界初の遺伝子組み換えサルが誕生。15年からはやはり中国で、ヒトの受精卵の遺伝子操作が試みられ、昨年は臨床応用に向けた研究も始まった」とのこと、
「英国でも昨年からヒトの受精卵にゲノム編集が使われることになった」とのこと、
「日本では国の生命倫理専門調査会が、この技術でのヒトの受精卵操作を基礎研究に限って認め、厚生省は受精卵と生殖細胞の遺伝子改変を禁止している」とのこと、
「世界人口は70億を超えるが、遺伝子をたどると1万人程度の共通のご先祖様に行き着く」とのこと、
「人間に最も近縁なチンパンジーはアフリカに約30万頭いるが、10万頭から枝分かれした」とのこと、
「現代人を悩ませるアルツハイマー、リュウマチ性関節炎、ぜんそく、子宮内膜症、心筋梗塞、熱帯性マラリア、HIVなどにチンパンジーは縁がないのである」とのこと、
「日本学術会議は03年、生命科学の全体像と生命倫理」という声明を出した」とのこと、
「21世紀に生きる私たちは、知らず知らずのうちに遺伝子差別による優生思想の復活、「いのち」の操作や、「こころ」の破壊、クローン人間の誕生、生態系の不調和といったことにつながらないよう、最大限の注意を怠ってはならないと警告している」とのこと、
等々初めて知ったことがたくさんある。
ただ、ゲノム技術で人間を作って、それが「今の」人間にとって有害無益であった時に、その作った人間を家畜のように殺すことができるのだろうか、殺していいものなのだろうか。そこが、ロボットとゲノム技術による人間との大きな違いのような気がするが。
また今の人間に攻撃的で「知的・体力的に圧倒的にパワフル」なゲノム人間が出現した時に、現在の人類は、どうすればいいのだろうか?
ゲノム技術の発展、ゲノム人間の誕生、みな地球の創造主のシナリオどおりなのだろうか?
疑問は尽きない。命は短い。