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憲法の良いとこ発見しませんか?


by sasakitosio

共謀罪のある社会<内心や思想を処罰!?盗聴もし放題!?「普通の人」も対象!頼れぬ裁判所?!現行憲法なら対抗の余地あり!!憲法を生かし自分を守る!!>

322日付朝日新聞朝刊17面に、「オピニオン&フォーラム 「インタビュー」」と言う欄がある。

 今日は、語り手は「神戸学院大学教授・内田 博文」さん、聞き手は・山口栄二氏だ。

 今日はこの記事を学習することにした。

 まず記事は、「犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案が21日、国会に提出された。近年進められてきた国の権限を強める法整備は、戦時体制を強めていった動きに似ていると指摘される。近代の刑法史に詳しい内田博文・神戸學院大学教授に聞いた。

 ――過去三回、国会で廃案になった「共謀罪」の構成要件を変えた法案が国会に提出されました。

 と、山口栄二さんは問う。

 「共謀罪はじめ近年の法整備などの動きは、戦前をほうふつさせます。

 国の安全保障に関する情報漏れを防ぐ特定秘密保護法が2013年に成立、

 14年には集団的自衛権行使容認の閣議決定がなされ、

 15年には自衛隊の海外での武力行使を可能にする安全保障関連法が成立しました。

 この流れの中に、共謀罪の制定があります。

 戦時体制を支えた、

 左翼思想を取り締まる治安維持法、

 軍事機密を守る軍機保護法や

 国防上の重要な情報をを守る国防保安法などの戦時秘密法、

 すべての人的、物的資源を戦争のために使えるようにする国家総動員法を整備していった戦前に重なるのです」と内田博文さんは答える。

 ――共謀罪のどこが問題なのでしょうか?

 と、山口栄二さんは問う。

 「「社会に有害な結果を生じる行為がなければ処罰されない」と言う近代刑法の基本原則に反します。

 中世の欧州では、思想や宗教、信条といった内心の状態が処罰の対象とされる事が多く、市民革命はそれへの反発が契機になって起こりました。

 フランスの人権宣言も思想、信条は処罰してはならない、として内心の自由を保障しました。

 明治維新後、お雇い外国人のボアソナードに草案を作らせた旧刑法は、フランスの刑法を参考にして編纂され、近代刑法の原則を導入しました」と内田博文さんは答える。

 ――でも、1925年大正14年)に成立した治安維持法で、思想、信条を罰することができるようになりましたね、と山口栄二さんは問う。

 「治安維持法を審議した帝国議会でも、「この法律は思想、信条を処罰するもので、近代刑法の原則に反する」という強い批判が出ました。

 それに対し、政府側は「社会の敵を対象にするので近代刑法の原則にのっとらなくてもいい」と答弁しています」

 「共謀罪の法案が成立することになれば、行為や結果を中心として処罰してきたこれまでの犯罪観を一変させます。

 危険性があるとみなされる者を敵として、危険性の除去のためには敵の人権が制限されてしかるべきだと考える「敵刑法」の論理によって内心を処罰できることになります」と内田博文さんは答える。

 --今回の法案では内心だけでなく、「準備行為」が要件に加わっているから、内心や思想を処罰することにはならないと政府は説明しています、と山口栄二さんは問う。

 「「犯罪行為のための準備行為」といっても、法案が例示するのは「資金又は物品の手配、関係場所の下見その他」といった日常的な行為ですから、歯止めにはなりませんと、内田博文さんは答える。」と、記事は切り出した。

 続けて記事は、

 「――かねて「今の状況は昭和3年(1928年)に似ている」と指摘されていますね、と山口栄二さんは問う。

 「昭和3年は、公共の安全を守り災厄を避けるため緊急の必要があり、帝国議会閉会中に政府が発布できる緊急勅令によって、治安維持法が改正されました。

 それまでの取り締まり対象だった共産党に加え、労組など共産党の「外郭団体」だとして取り締まり対象に加えられました。

 これ以降、プロの活動家だけでなく普通の人が取り締まられるようになり、拡大解釈で戦争に反対する勢力を弾圧するため使われました。

 戦況が悪化したした昭和181943)年以降は、反戦的な傾向がある小規模の新興宗教への適用が目立ちましたが、反戦思想は治安維持法の対象ではなかったので、国家を否定することが口実とされました」と、内田博文さんは答える。

 ――「共謀罪」も拡大解釈が可能ですか、との山口栄二さんの問に。

 「すでに拡大解釈される仕掛けがあるのです。「共謀」という概念について最高裁の判例は、明示的なものである必要はなく、暗黙の共謀でもいいとしています。

 たとえば、米軍基地建設反対運動をしている市民団体が威力業務妨害罪で摘発された時に、その妨害行為をするための話し合いに参加していなくても、その話し合いがあることを知って黙認した人も「暗黙の共謀」があったとして起訴されるかもしれません。

 さらに、共謀罪に幇助罪が成立するという解釈を取れば、共謀と直接関係のない家族や友人も摘発される可能性があります」と、内田博文さんは答える。」 と、教えてくれる。

 さらに記事は、

 「――他の現行法と結びつくと危険なことがあるますか、と山口栄二さんは問う。

 「通信傍受(盗聴)法では、2年以上の懲役・禁固に当たる犯罪が数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況があるときは、裁判所の許可を得て通信傍受ができることになっています。

 共謀罪はこれにあたりますから、共謀罪の疑いさえあれば盗聴し放題が可能ということになります」と、内田博文さんは答える。

 ――「治安維持法が「育ての親」だった」ともしてきされます、と山口栄二さんは問う。

 「裁判所が捜査当局側の拡大解釈を容認した結果、処罰の対象が雪だるま式に拡大しました。例えば、慶応大の学生が大学公認の経済研究サークルで共産主義の研究をしたとして起訴された事件で、大審院は昭和151940)年の判決で「思想の研究と運動とは厳に区別すべきだ」と言う弁護人の訴えを退けました。

 共産党の目的達成に資することを認識しながら研究したとして罪に問いました。

 これによって左翼思想の研究が事実上封じられることになりました。

 「普通の人々」の「普通の生活」が処罰の対象とされるようになったのです」と、内田博文さんは答える。

 ――なぜ裁判所は歯止めにならなかったのですか、と山口栄二さんは問う。

 「思想犯の動向については、主に思想犯の取り締まりを担当した思想検事の方が裁判官よりも詳しく、彼らの主張をうのみにしやすい状況がありました。

 治安維持法以降は格段に検察官の権限が拡大された点も重要です」と、内田博文さんは答える。

 --現在はどうでしょう、と山口栄二さんは問う。

 「現在は戦前以上に「検察官司法」が進んでいるのではないでしょうか。

 確定判決も無罪率は0.03%(2015年)にすぎず。

 量刑も検察官の求刑に近い判決がほとんどです。

 戦前でも昭和3年までは無罪率が2%を超えていたのと比べても、現在の刑事裁判は事実上検察官が仕切っていると言っても過言ではありません」

 「沖縄県では米軍施設建設反対のリーダーが器物損壊罪容疑などで逮捕され、約5か月も拘留された例は、明らかに運動つぶしのための予防拘禁に近く、憲法が禁じている正当に理由のない拘禁です。

 こうした拘留を認めたことからも、裁判所にチェック役を期待するのは難しいかもしれません」と、内田博文さんは答える。

 ――治安維持法は戦後廃止されましたが、戦後の刑事司法に悪影響を及ぼしたそうですね、と山口栄二さんは問う。

 「戦前の刑事裁判では、検察官が取り調べ時に作成し、被疑者に署名させた自白調書は、自白強要を招くとして、殺人などの重大な事件では有罪の証拠としては認められませんでした。

 治安維持法では重大な戦時犯罪に限って有罪の証拠にできるとされました。

 この例外的措置は廃止されるべきでしたが、戦後の新刑事訴訟法で、逆に、どの事件でも有罪証拠にできるようになりました。

 その結果、無理な取り調べの虚偽自白による冤罪事件が多く起きたのです」と、内田博文さんは答える。 」と教えてくれる。

 最後に記事は、「――共謀罪が成立すると、治安維持法のように「普通の人々」の「普通の生活」が処罰の対象になりますか、と山口栄二さんは問う。

 「行政の無策への反対やあらゆる権利運動が対象になるでしょう。共謀罪の成立要件とされている「組織的犯罪集団である団体」の活動については、組織的犯罪処罰法で会員制リゾート会社による詐欺的な預託金募集といった企業の営業も対象になると解釈されています。

 また、偽証罪も共謀罪の対象犯罪とされますから、例えば弁護士が証人との打ち合わせで、「次回の口頭弁論でこう証言しよう」などと、普通に話し合っただけでも偽証罪を疑われ、共謀罪に問われかねません。

 戦前、、治安維持法違反事件を弁護した多くの弁護士が、同法違反で起訴された事件を思い起こさせます」と、内田博文さんは答える。

 ――法案が成立したら、どのように向き合うべきでしょうか、と山口栄二さんは問う。

 「憲法31条がある以上、対抗の余地はあります。共謀罪は、近代刑法の基本原則を定めた31条に反する「違憲」だと主張することです。

 ある行為を犯罪として処罰するには、あらかじめ法律で、犯罪とされる行為と、それに対して課される刑罰を明確に規定しておかなければならないとする原則です。

 共謀罪はこの「明確性」の原則に反します。

 思想・信条 の自由を保障した憲法19条にも抵触する恐れが強いといえます。

 ただ、自民党憲法改正草案のように「公益及び公の秩序に反してなからない」といった権利を限定する文言が入れば対抗は難しくなります」と、内田博さんは答える」として締めくくった。

 読んで大変勉強になった。

 内田博文さんの「共謀罪をはじめ近年の法整備などの動きは、戦前をほうふつさせます」との指摘、

 「左翼思想を取り締まる治安維持法は、軍事機密を守る軍機保護法や国防上の重要な情報を守る国防保安法などの戦時機密法、すべての人的、物的資源を戦争のためにつけるようにする国家総動員法、家族や民間団体を統制する戦時組織法制を整備していった戦前と重なるのです」との指摘、はあたっているようで恐ろしい。治安維持法の大改正の後、9か月後に真珠湾攻撃があった。共謀罪の制定の後に待っているのは、朝鮮有事か、米中衝突か、いずれにしても日本の近くでの戦争が予定されているのかもしれない、と思うと恐ろしい。

 また内田博文さんは共謀罪の問題点として「「社会に有害な結果を生じる行為がなければ処罰されない」という近代刑法の基本原理に反します」と教えてくれ、

 また内田博文さんは法案が成立したときの向き合い方について 「憲法31条がある以上、対抗の余地はあります。共謀罪は、近代刑法の基本原理を定めた31条に反する「違憲」だと主張するのです。」とも教えてくれる。

 

 


by sasakitosio | 2017-03-27 07:47 | 朝日新聞を読んで | Trackback