「法治」に嘆いた秦の商鞅 <覚醒剤運搬罪で起訴され、「懲役15年か、無期懲役または死刑」を求刑された愛知県の元稲沢市議・桜木琢磨(73)さん、起訴から2年8か月超えても拘留中?>
2017年 03月 15日
3月14日付東京新聞朝刊13面に、「論説委員のワールド観望」という欄がある。筆者は、加藤直人氏だ。
今日は、この筆者に学ぶことにした。
まず筆者は、「中国で覚せい剤を運ぼうとしたとして麻薬運搬罪で起訴され「懲役15年以上か無期懲役または死刑」を求刑された愛知県の元市議、桜木琢磨被告(73)。拘留期限が10回も延期され、起訴から2年8か月を超えても判決が言い渡されない異常事態が続く。
習近平政権は「依法治国」を強調しているが、桜木被告の裁判は共産党の意向が法の優先されるまやかしの「法治」の実態を浮き彫りにしているかのようだ。
中国の法律は起訴から遅くとも3カ月以内に判決を出すよう定めているが、死刑の可能性がある重大事件は最高人民法院の判断で延長も可能だ。とはいえ、「事件が複雑で証拠を確認する必要がある」と毎回同じ理由で10回も拘留期限を延長したのは人権侵害も甚だしく、弁護人が「判決を先延ばししているだけ」と批判するのは当然だ。
長期裁判の背景について、外交関係者や中国学者の間では「外国の公職者に死刑を含む求刑をしながら無罪判決を出すことに、党内部で慎重審理を求める声がある」「両国関係への政治的影響を考慮している」なども味方がある。
中国の裁判の実態をよく考察しているともいえるが、政治の風向きが司法判断に影響を与えていいはずもない。
中国共産党は「党の指導が社会主義法治の最も本質」と公言するが法より優先される党の意向を法を通じて強権的に実現することが中国の言う法治であるなら、本質的には「人治」と変わらないだろう。
一貫して無罪を主張する桜木被告は昨年初め、手記で「苦汁をすするような生活、この辛抱はいつまで?いつか限界に、と憔悴するこの頃です」と嘆いた。」と教えてくれる。
続けて筆者は、「中国で法治といえば、紀元前4世紀に法家思想をもとに秦天下統一の礎を築いた商鞅が思い浮かぶ。
末路は哀れであった。
秦から逃亡し関所の宿に泊まろうとしたが、「商鞅様の法で通行手形を所持しない人は止められません」と断られ、最後は車裂きの刑に処せられる。
商鞅は「法を為すの弊、一に此に至れるか」との言葉を残し、厳格な法が自身の身を滅ぼした悲運を嘆いた。
商鞅の故事は理想的な政治支配の方法として法家が主張した法治の形式主義とその弊害を示す。
だが、習政権の唱える法治は文革時代の政治が人治と批判されたことを踏まえ、法治を装った人治に過ぎないともいえる。」と指摘した。
最後に筆者は、「中国の裁判でも「疑わしきは被告人の利益に」との刑事裁判の原則は採用されている。
弁護人は、「検察は桜木被告が覚醒剤の存在を知っていたと明確に立証できなかったのだから、裁判所は無罪判決を出すべきだ」と繰り返し求めるが、中国流の法治の下では判断先送りが続く。
法治の弊を嘆いた商鞅の時代から2400年余。
広州の拘置所に閉じ込められたままの桜木被告は「助けのない感じだ。こんな状態が終わる日はくるのか」と、商鞅と対照的に真の法治が貫かれぬ現状を嘆いている。」として締めくくった。
読んで勉強になった。
「愛知県の元稲沢市議・桜木琢磨(73)が、麻薬運搬剤で起訴され「懲役15年か無期懲役または死刑」の求刑を受け、拘留期限が10回の延期され、起訴から2年8か月を超えても判決が言い渡されていない、こと。
一貫して無罪を主張する桜木被告は昨年初め手記で「苦汁をすするような生活。この辛抱はいつまで?いつか限界に、と憔悴するこの頃です」となげいている、とのこと。等々を初めて知った。
一国としては最も多くの都市を訪れ、訪問回数もおおい中国で、同じ年代の桜木琢磨さんが、麻薬運送罪に問われ外国の地で2年8か月も拘留されている、とのこと。どこでどう間違えたのか分からないが、結果として、気の毒でならない。一日も早い無罪放免を祈りたい。
また、秦から逃亡し関所の宿に泊まろうとしたが「商鞅様の法では通行手形を所持しない人は泊められません」と断られ、最後は車裂きの刑に処せられた、との「商鞅の故事」を知ることができた。
そして、中国では「法治」は、「放置」に通じることを教えてもらった。