騎士団長殺し <村上春樹「騎士団長殺し」(第一部、第二部)(新潮社)だ!目には見えないが、確実に存在するものに対する感覚が村上氏に備わっている!?>
2017年 03月 06日
3月3日付東京新聞朝刊25面に、「本音のコラム」という欄がある。筆者は、作家・元外務省主任分析官・佐藤優氏だ。
今日はこの筆者に学ぶことにした。
まず筆者は、「村上春樹「騎士団長殺し」(第一部、第二部)(新潮社)を読了した。
強い知的刺激を受けた。
この長編小説を含め、村上氏の作品は、複数の首尾一貫した読み解きが可能だ。
筆者の場合、大学の講義にどう活用できるかという観点からまず読んだ。
村上氏にはヨーロッパ思想が肉体化している。
とりわけ、目には見えないが、確実の存在するものに対する感覚が村上氏に備わっている。
そのことが作品の思想的奥行きを深くしている。」と切り出した。
続けて筆者は、「肖像画家である主人公の「私」は、「でも目に見えることだけが現実とは限らない。そうじゃありませんか?」と問いかける。
キリスト教神学は、信仰、希望、愛のような、目には見えないが確実に存在する事柄について研究する学問だ。
また、騎士団長は「歴史の中には、そのまま暗闇の中においておった方がよろしいこともうんとある。
正しい知識が人を豊かにするとは限らんぜ。
客観が主観を凌駕するとは限らんぜ。
事実が妄想を吹き消すとは限らんぜ」という。
こういう言説にどう立ち向かっていくかが神学倫理の重要な課題だ。」と教えてくれる。
最後に筆者は、「来年度の同志社大神学部と名桜大学の集中講義で、学生たちと「騎士団長殺し」の読み解きをしてみたくなった。
月並みな神学書や哲学書を用いるよりもキリスト教の本質に肉薄することができると思う。」として締めくくった。
読んで勉強になった。
「肖像画家である主人公の「私」は、「でも目に見えることだけが現実だとは限らない。そうじゃありませんか?」と問いかける」とのこと、
「また騎士団長は「歴史の中には、そのまま暗闇の中に置いておいたほうがよろしいこともうんとある。
正しい知識が人を豊かにするとは限らんぜ。
客観が主観を凌駕するとは限らんぜ。
真実が妄想を吹き消すとは限らんぜ」という」とのこと、等々は多くの考えるヒントを与えてくれた。