この時代 羽生三七がいれば<①派閥に属さず②特定労組と結ばず、質問は政府への警告と対応策を促す!>
2016年 12月 13日
今日は、この筆者に学ぶことにした。
まず筆者は、「日ロ首脳会談がまじかに迫っても、けんか腰の不毛な戦いばかり続くのが我らの時代の国会だ。60年余り前の論戦を読み返すと、何だか夢のような思いがする。
ときに1955年7月26日、舞台は参院外務委員会。保守合同で自民党が生まれる4か月前、左右社会党が再統一される3か月前のことである。
質問に立つのは左派社会党の良心と呼ばれた参院議員会長羽生三七、51歳。
答弁するのは北方領土問題の解決に言葉通り生命をかける首相鳩山一郎、72歳。
羽生がただす。
「保守合同の話し合いがどういうことがあっても、総理大臣が現職で仕事を完成するという保証があるかどうか」。
首相の日ソ交渉を仕上げるとの想いが反対論者を抱え込む保守合同によって揺らぎ、あるいは首相退陣に至るのは、日本にとってよくない。
右でもない左の社会党の論客がこう迫るのだ。
鳩山が答える。
「ソ連と日本との国際関係を戦争状態に置いておいたならば、これはとんだことになる」。
そう思いついたのは、自分が脳出血で倒れて病床にあった4年前。米ソ戦争の危険があると感じたころだ。
そう回顧したうえで「どうしてもこの問題だけはやりたいと思っております」と応じた。
羽生は「やって下さい。ぜひ、社会党も応援しますよ」と引き取ったが、それだけではない。
羽生の回顧によれば、鳩山は「声涙ともにくだって」答弁を続けることができなかった。隣の重光葵外相が「そんなに興奮しないように」と首相の背に手を当てて慰めていた。「全国民が応援しているからやりなさい」と叫ぶ者ありーーこれは議事録に残る。」と切り出した。
つづけて筆者は、「経歴を見れば、羽生三七(1904~1985)は筋金入りの闘士である。戦前、故郷長野で社会主義運動に入り、治安維持法違反で投獄された。戦後、社会党結成に参画、村長を経て47年の第1回参院選から連続5回トップ当選を続けて77年、政界を引退した。
だが羽生は教条的な主義者ではなかった。本会議の代表・緊急質問や予算委員会の総括質問は50回以上に及ぶ。
その想いは、わが先達の遺した「ある社会主義者 羽生三七の歩いた道」(石川真澄 朝日新聞社)や「忘れられない国会論戦」(若宮啓文 中公新書)に詳しい。
社会党の主張なら100%日本は安全、政府の主張は100%誤っているというものではない。どちらの政策がより安全性があるか、相対的な問題だ。自分は、①派閥に属さず②特定労組と結ばず③後援会を作らず、の三つの「無」を守った。
マスコミをにぎわす爆弾質問は不得意だったがその代り、将来起きるだろう事態を予測して政府に警告し、対応策を提起した。そのために理想を失い、単なる現実追随に陥ったとは思わないーー。
政治が数の多寡だけで決まるなら、選挙しか必要なない。論戦によって初めて少数者が世論を味方につけて多数者を追い込み議席の劣勢を跳ね返せる。議会制民主主義の面白さはそこにある。
論戦の先に再び選挙が待つ。
強行採決にだけ頼る多数者は世論から手痛いしっぺ返しを食らうだろう。
展望なき非難だけにとどまる少数者は一時的に溜飲を下げさせることはできても、次なる多数者へと飛躍することは難しいに違いない。」と指摘した。
最後に筆者は、「安倍外交の正念場である。ロシア・プーチンとアメリカ・トランプの両大統領を相手に、それぞれ北方領土と沖縄という戦後最大の積み残しの問題を抱えて首脳外交に賭けるほかない。
すでにイタリアでは憲法改正の国民投票に敗れて首相が退陣を表明。来年は、フランスでもドイツでもおそらく韓国でも、政権交代含みで混乱が予想される選挙が続くだろう。
米ソ冷戦構造も55年体制も今はない。
いやおうなしに日本外交は自立の道を歩まざるを得ない時代に入った。
だからこそ羽生が今いれば、あるいは羽生の後継者がいれば、これぞ野党の本懐だと思うはずだ。
資料を集めてノートをとり、虎視眈々と狙うだろう。
どこかに首相の気付かぬ穴があるはずだ。
日本のためにどう先読みして警告し対応策を準備させておこうか、と。」として締めくくった。
読んで勉強になった。
「羽生の回顧によれば、鳩山は「声涙ともにくだって」答弁を続けることができなかった。隣の重光葵外相が「そんなに興奮しないように」と首相の背に手を当てて慰めていた。「全国民が応援しているからやりなさい」と叫ぶ者ありーーこれは議事録に残る。」とのこと。このくだりでは、鳩山首相の心情がよく分かった。
また、「だが羽生は教条的な主義者ではない。本会議の代表・緊急質問や予算委員会の総括質問は50回以上に及ぶ。その想いは、わが先達の遺した「ある社会主義者 羽生三七の歩いた道」(石川真澄 朝日新聞社)や「忘れられない国会論戦」(若宮啓文 中公新書)に詳しい。」とのことは、初めて知り、各書を遅まきながら、購読してみたくなった。
筆者の「強行採決にだけ頼る多数者は世論から手痛いしっぺ返しを食らうだろう。展望なき非難だけにとどまる少数者は一時的に溜飲を下げさせることはできても、次なる多数者へと飛躍することは難しいに違いない」の指摘は120%当たっていると思った。
ただ今今日、攻める野党に「展望」が無く、受ける与党にも広く深い「懐」が無い、困った状況がだらだら続いている「現状」なのだろうか?
また、「安倍外交の正念場である。ロシア・プーチンとアメリカ・トランプの両大統領を相手に、それぞれ北方領土と沖縄という戦後最大の積み残しの問題を抱えて首脳外交に賭けるほかない。」、「日本外交は自立の道を歩まざるを得ない時代に入った。」等の指摘も、その通りだと思った。
私たち日本は、世界に冠たる「平和憲法」をもち、曲がりなりにも75年もそれを実践してきた。
超大国による経済力や軍事力など「力」の支配から、「和をもって貴しとなす」という「徳」と「日本憲法を世界へ未来へ」という「世界平和」の思想で、多くの小国と協力して「超大国」を説得できないものだろうか?