原発百基 中国「初の白書」 <中国発「原発の安全神話」、怖すぎるー!?>
2016年 05月 22日
まず記事は、「中国で原発の数が急増している。2011年3月の時点では13基だったが、現在は倍以上の30基になった。福島の原発事故を受けて一時的に新規計画を凍結したが、12年以降は建設ペースを加速させている。30年には米国を上回る百基以上にまで増やし、海外にも積極的に進出すると言うが、安全面や軍事転用などで心配はないのかーー。(佐藤大、池田悌一)
3月、浙江省の三門原発1号機の主要設備の配置を終え、試験運転に入るという発表があった。東芝の米原子力子会社「ウェスチングハウス・エレクトリック」(WH)が手がける最新鋭の「AP1000」だ。
中国では今年に入って既に二基の新規原発が完成し、営業運転を始めた。
年内にさらに7基程度が加わる予定で、三門原発とは異なり、多くは中国企業が手がけるものだという。
中国政府は今年1月、原発に関して初めて白書を発表した。現在、中国内には30基の原発があり、総発電能力は計2821万キロワット。
20年までに、倍以上の5800万キロワットに引き上げる計画だという。
白書では、30年までに「原発強国」の実現を目指すと宣言している。
11年3月の東京電力福島第一原発事故を受け、中国政府は新規建設計画の審査手続きを凍結したが、建設中のものは工事を続行した。
同年8月に嶺澳原発4号機(広東省)、12年4月に泰山第2原発4号機(浙江省)が完成した。そして、同年10月、「安全対策は十分」と凍結を解除した。
原発建設は一気に加速し、13~15年に13基が完成した。また、12年11月~昨年末に工事に着工した原発は13基に上る。
こうした動きについて、中国の電力事情に詳しい一般社団法人「海外電力調査会」の松岡豊人調査第一部長は、電力需要と大気汚染の問題が影響していると指摘する。
現在、中国の総発電量のうち石炭火力発電所が7割以上を占めている。石炭は深刻な大気汚染も引き起こしており、エネルギー転換が急務となっている。風力や太陽光発電にも力を入れているが、一基で百万キロ超の原発に対する期待は大きい。
原発新設は、国際公約となっている温暖化対策でもある。中国政府は昨年6月、二酸化炭素(CO2)排出量を30年までに、国内総生産量(GDP)の上昇分を加味した上で、05年比で60~65%削減すると発表している。
これまでは、内陸部で過酷事故が起きた場合、河川下流域に被害が拡大するとして、科学者らの慎重論が根強かったが、第13次5か年計画(16~20年)では「内陸原発プロジェクトの前期作業を積極的に展開する」と踏み込んでいる。いままで沿岸部だけで建設してきたが、今後は内陸部でも進めて行くようだ。
松岡氏は実際に中国の原発の施設内を見学したことがあり、実感として、「最前線で専門知識がある人々が不足していることは確かだ。設備が新しことは良いが、人材育成が課題になっている。ただ、技術も職員の意識も高いことは間違いない」と話す。
1月発表した白書については、「国際社会への安全アピールという狙いもある。国内での建設だけでなく、輸出も増やそうとしている」と指摘した。
つづけて記事は、「中国が泰山第一原発(浙江省)で試験運転に成功した1991年からわずか25年。黎明期は海外に頼ったが、国産技術を急速に向上させてきた。第十三次5か年計画には、毎年6~8基を新設し、2030年には百基以上まで増やす目標が盛り込まれているが、さらに、海外への売り込みも積極的に展開するわけだ。
1990年代にパキスタンに輸出した実績がある。
昨年は、中国核工業集団(CNNC)が英国やアルゼンチンと国産の新型原発「華龍1号」の輸出で合意した。
「一帯一路(新シルクロード)構想」を軸に、中央アジアや東欧の諸国への働きかけにも余念がない。CNNCは中国の原発を支える「三大原子力企業」の筆頭格とされる。軍に近い政府直轄の大型国有企業で、核兵器開発を担ってきた旧核工業省を母体としている。
ほかの二つは、広東省を地盤とする中国広核集団(CGN)、国家核電技術と中国電力投資集団(SPIC)。中国政府の原発への意気込みは、巨額の予算にも表れている。今年~20年の5年間で、「華龍1号」など国産原発の導入に総額5千億元(約8兆4千億円)を投じる方針。」と教えてくれる。
さらに記事は、「「中国原発大国への道」の著者がある帝京大の郭四志教授(エネルギー経済)は「国内経済が減速し輸出が鈍っている中で、「華龍1号」を中国ブランドとして確立し、高速鉄道と並ぶインフラ輸出の柱にしたいのだろう」と話す。
常葉大の山本隆三教授(エネルギー環境政策)は「中国の原発の資材は大半が中国産で、建設費は日本や欧米の3分の2程度に抑えられる」と価格の優位性について指摘する。「アフリカでは天然ガスに目をつけ、パイプラインの建設費を拠出した。
欧州でも送電線網の整備に出資している。その延長線上に原発がある。他国の産業基盤に関与することで、影響力を強めたいのだろう。」
その一方で、「中国式の技術を確立した」と主張しているが、いまだに日本やフランスの技術に寄りかかっている面がある。本当に大丈夫なのか」と不安もあるという。
「万一、過酷事故が起きれば、偏西風で放射性物質が運ばれる恐れがあり、日本人も人ごとではいられない」
明治大の勝田忠広准教授(原子力政策)は「中国はあまりにも情報開示がお粗末だ。外部のチェックは一切受け付けない状況下で、いくら「安全」と主張したところで、検証できない」と公開情報の少なさを問題視する。
「中国では国策への反対活動を公然と行うのは難しいが、知人は「心配だ」と漏らしている」と言う。」と教えてくれる。
最後に記事は、「原発は軍事転用の恐れもつきまとう。使用済み核燃料からは、核兵器の原料となるプルトニウムを取り出すことが可能だ。
勝田氏は、「中国の原発を欲しがっている国の中には政情不安なところも多く、本当に平和利用の為だけに使う意図なのか測りかねる」と疑問視視した上で、こう指摘した。
「中国による原発輸出の加速は、核規制の緩い世界につながる恐れがある。
中国はまず、情報隠しの体質を改め、自ら透明性の確保に努めるべきだ。他国の原発を手掛けるのは時期尚早だろう。今後、世界レベルで中国の動きを注視していく必要がある」」として締めくくった。
読んで、心配になった。
明大の勝田忠広准教授の「中国はあまりにも情報開示がお粗末だ。外部のチェックは一切受け付けない状況下で、いくら「安全」と主張したところで、検証できない」との指摘、
「中国による原発輸出の加速は、核規制の緩い世界につながる恐れがある」との指摘、等はその通りだと思った。まるで、国ぐるみ「原子力ムラ」のような気がした。
その上で、日本において、安全が神話であったように、原発の過酷事故が国内外で起きることを前提に、「日本国民の生活の安全」策をいまから準備することが、国外での核戦争や、国外での原発事故後に到来する「人類絶滅の危機」にも、「日本人」が生き残れる「細い細い道」のような気がしてきた。