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by sasakitosio

欧州社会の差別・偏見「イスラム嫌い」の衝動 抑えよ<トマ・ピケティ>

 3月24日付朝日新聞朝刊17面に、「ピケティコラム」という欄がある。筆者は、パリ経済大学教授・トマ・ピケティ氏だ。
 今日は、この筆者に学ぶことにした。
 まず筆者は、「欧州社会におけるイスラムおよびイスラム教徒の在り方について、世の議論の展開が、いよいよヒステリックになっている。
 情報も的確な研究もないため、議論の材料となるのは、いくつかの事件だ。パリのテロやケルンの暴行事件のような出来事は、確かに劇的だったが、一方で関係する人口のうちごくわずかな部分がかかわっただけである。
 なのに、統合と共生への意思や能力が数千万の人にあるかどうかについて、これらの出来事を通じてひとくくりに結論を出そうとしている。
 実際、欧州連合(EU)の人口5億1千万人のうち、およそ5%にあたる2500万人が(実践しているかどうかは別にして)イスラム文化に属す、あるいはイスラム教徒であるという。最も多いのはドイツとフランスで、6~7%である(両国の人口計約1億5千万人のうち約1千万人)。存在感のある少数派だ。この数字はアラブ・イスラム教世界の反対側にあるインドに比べ確かに少ない(インドは人口の15%近い)。それでも米国よりは多い。そこは、人口の1%以下に過ぎない。
 幸い、信頼するに足る調査がわずかながら存在するので、議論の方向性を見直すことは出来るはずだ。
 例えば、仏国立人口統計学研究所(INED)と国立統計経済研究所(Insee)が実施した「生い立ちと出自」調査がある。
 研究者は移民8300人の生活を、彼らの子孫8200人の生活、さらには外国にルーツを持たないフランス人の生活を比較した。
 その結果、「不均等な統合」が明らかになったのである。
 すなわち、移民の子どもたちは教育を受けたり、移民の出自をもたない配偶者や友人を得たりすることで、両親の話す言語をしばしば重視しなくなる。
 その一方で、移民の子どもたちは長年失業に悩まされ、同レベルの学歴の他の若者たちと同じような職につけるわけではない。
 不均衡がとりわけ際立つのは、マグレブ諸国とブラックアフリカからの移民家庭の出身者である。」と教えてくれる。
 つづけて筆者は、「経済学者マリアンヌ・バルフォール氏の研究はこの分析を裏付け、イスラム教の家庭出身の若者が職業上の差別をどれほど受けているかを示している。
 手法は簡単で、6231の求人に研究者が偽りの履歴書を送る。応募者の指名や略歴は無作為にし、採用面接の通知が来る割合を調べた。
 結果は気のめいるものだった。
 応募者がイスラム教徒風の名前で、特に男性である場合、返信の割合はがくんと下がる。
 こうした応募者で面接の通知を得たのは5%以下だった。それ以外の場合は20%である。
 さらにひどいのは、最高の学歴を持ち、考えられる中で最良のインターンを経験した場合でも、イスラム系の男であるという事実の前だと、返信率がほとんど上がらなかったということだ。
 別のいい方をすれば、成功のための表向きの条件をいかに満たそうとも、自分で変えられないものに関する差別がつきまとうのである。
 この研究が新しのは、会計係の採用といった典型的な中小企業の何千もの求人を対象とした点だ。だから、過去にすすんで研究に応じた少数の大企業から得られた結果に比べ、差別の度合いも、残念ながら説得力も、ずっと大きい。
 バルフォール氏はまた、イスラム教に対する反感も問題だと明らかにした。たとえば、同じレバノン系でも、「モハメド」という名前だと書類選考を通過しないが、「ミシュル」という名前ならうまくいく。      
 履歴書に「イスラム系のボーイスカウトに参加した」と書くと通過率が下がるのに対し、カトリックやプロテスタントのボーイスカウトの経験なら通過率は上がる。」と教えてくれる。
 最後に筆者は、「イスラム嫌い」という言葉を使うことがゆるされるだろうか。もちろん、雇用者側は、彼ら何百万もの若者たちが潜在的に暴力を振るうとか、イスラム過激派予備軍であるとか、みなしているわけではない。
 しかしながら、偏見は確かに存在し、最近の事件で一層強まった。その影響が不満と恨みをさらに生んでいる。
 このまぎれもない不公平を目の当たりにして、バルフォール氏は明確なアファーマティブ・アクション(少数派優遇措置)を提唱する。突拍子もない発想ではなく、他国では実施されている。インドは最も恵まれないカーストへの雇用の優先割り当てを実施(ただし同様に差別を受けるイスラム教徒には与えられなかった)。
 米国は、少数派の黒人に対し同様の政策を試みた。
 ただ、現在の欧州の状況を考えると、こうした政策は利益よりも害をもたらす恐れがある。その代りに、差別を認めない法律をいっそう厳格に適用すべきだ。もし必要なら、履歴書をランダムに送る方法を活用して罰を設けることもできる。
 もう一つ指摘しておかなければならない。
 現在のヒステリー状態は、難民危機と、2008年の金融危機に対する欧州の無様な対応とが結びついてうまれたものなのだ。2000~10年、欧州は人口流出分を除いて年間100万人の移民を受け入れ、失業は減り、右翼は後退していた。10~15年は、必要性がむしろ高まっているのに、流入数は突然3分の1になった。
 そろそろ、欧州とその統合モデルの再起動を、フランスとドイツが打ち出す時だ。
 そのためには債務の一時払い猶予が必要だし、インフラと教育の分野に大規模な投資をするべきだ。さもなければ、外国人嫌いの衝動に足をすくわれるかも知れない。(ルモンド紙、2016年3月13-14日付、抄訳)」として締めくくった。
 読んで勉強になった。
 「欧州連合(EU)の人口5億1千万人のうち、およそ5%にあたる2500万人が(実践しているかどうかは別にして)イスラム文化に属す、あるいはイスラム教徒である」とのこと、
 「最も多いのはドイツとフランスで、6~7%両国の人口計約1億5千万人のうち約1千万人」」とのこと、
 「経済学者マリアンヌ・バルフォール氏の研究はこの分析を裏付け、イスラム教の家庭出身の若者が職業上の差別をどれほど受けているのかを示している。」とのこと、
 「偏見は確かに存在し、最近の事件でいっそう強まった。その影響が不満と恨みをさらに生んでいる」とのこと、
 「バルフォール氏は明確なアファーマテブ・アクション(少数派優遇措置)を提唱する」とのこと、
 等を知ることができた。
 そして、筆者は、「そろそろ、欧州とその統合モデルの再起動を、フランスとドイツが打ち出す時だ。
 そのためには債務の一時払い猶予が必要だし、インフラと教育の分野に大規模な投資をすべきだ。さもなければ、外国人嫌いの衝動に足をすくわれるかもしれない」と教えてくれる。
 筆者の指摘する、「債務の一時払い猶予とインフラと教育に大規模な投資行えば」、キリスト教社会でのイスラム嫌いは、一時的に緩和するのは確かだろうと思った。
 職業上の差別が経済的格差の固定を生みやすい、それが偏見と暴力・テロを生み出していることは、確かだと思う。
 が、気味が悪い、いやな感じ、という気持ち(偏見)が宗教上の違いからきているとすれば、宗教間の和解と相互理解・尊重・評価なくしては、偏見を消すことはできないのではなかろうか。
 エルサレムを一人歩きをして、聖墳墓教会に真摯な祈りを捧げ、嘆きの壁にも真摯な祈りを捧げ、神殿の丘でも真摯な祈りを捧げ、神殿の丘では「あなたはムスリムですか?」と尋ねられたりした。
 そのとき、感じたのは、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教に共通していたのは「真摯な祈り」であるということだった。その後、ベナレス、ブッタガヤを一人彷徨してきたが、真摯な祈りはそこにもあった。
 そしていま、人間同士の偏見と暴力の連鎖を解くのに、宗教的大革命が必要な時代かもしれない、そんな気がしている。
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by sasakitosio | 2016-03-26 07:41 | 朝日新聞を読んで | Trackback