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by sasakitosio

SMAPと小林幸子 「村」を揺るがすネット市場

 2月18日付東京新聞19面に、「読み解き経済」という欄がある。筆者は、東京大学大学院経済学研究科教授(理論経済学)教授・松井朝彦氏だ。
 今日は、この筆者に学ぶことにした。
 まず筆者は、「メンバー5人の生放送番組での「謝罪」によって、SMAPの解散が回避された。TVでの街頭インタビューは「解散しなくてよかった」とのコメントで埋め尽くされた。
 菅義偉官房長官も記者会見で「メンバーの皆さんが一堂に会して解散しないことを表明したことで、本当によかったのではないか」と述べた。
 同じころネットでは、同じ「謝罪」場面を「公開処刑」と評する書き込みや、独立を阻止する事務所の行動を批判する声が目立った。
 一連の騒動を、共同体と市場のせめぎ合いの問題として読み解いてみたい。」と切り出した。
 続けて筆者は、「日本ではタレントは多くの場合、特定の事務所に所属し、芸能活動を展開する。芸能界は厳しい。あるお笑い芸人の話によると、3000人ぐらい活動中のお笑い芸人がいるとして、自活できるのは200~300人だという。いわゆるタレントと呼ばれる人たちも大同小異だろう。
 稼げるタレントが所属事務所に金を落とし、稼げないタレントの食い扶持を賄う。このような仕組みを所属型システムと呼ぼう。
 稼げるタレントに独立されてしまっては、事務所の存続、ひいては所属型システムが根底から揺らいでしまう。そこで、意図的か自然は発生的かはともかく成立しているのが、「事務所から独立した芸能人は干される」と言う慣行である。
 この慣行は比較的閉鎖的ないし組織化された共同体で「裏切り」行為をした個人は、裏切った相手だけでなく、共同体全体から「村八分」にされる。それによって「裏切り」行為を抑止する。
 「村八分」という制裁は罰を与える側も拘束する。
 「村八分」に参加しなかった成員は、逆に村八分の対象になってしまう。そのようにして「村」の規範は守られるのである。」と教えてくれる。
 さらに筆者は、「SMAP解散騒動は、芸能事務所とTV局および芸能人からなる共同体が中居正広さんらの独立を「裏切り」とみなすことで抑止力を発動し、独立を阻止した例と解釈することができる。共同体という旧システムに属するTV局が抑止力発動に与したのは当然である。
 また、TVの情報番組の出演者たちが騒動に対して当たり障りのないコメントをするのも、自分が「村八分」の対象にならないための行為と見ればわかりやすい。
それに対して、旧システムに属さないネット民が、こぞってそれを批判したことも理解できよう。
 このような所属型システムの対極にあるのが契約型システムである。
 こちらのシステムでは一回ごとに売り手と買い手が契約を結んで取引をする。
 形態としては市場におけるスポット的売買に近い。
 米国ではエンターテインメントの世界でも、俳優らが事務所に所属するのではなく、制作スタジオと直接契約を結んで労働を提供する。
 もちろん契約型スステムも万能ではない。一人ひとりの俳優の交渉能力は弱く、搾取されかねないため、組合をつくって製作会社側に対抗する。
 また、契約システムでは、一部のトップスターのギャラが高騰することが知られている。それだけの価値を生み出しているのだから当然と考えるか、世の中は不平等だと考えるかは意見が分かれるところだろう。
 もっとも、トップスターのギャラの高等によって業界全体の発展に支障が生じてしまっては元も子もない。スター選手のギャラの高騰に悩むスポーツ界では、様々な方策でチームの財政と個人の権利のバランスの維持に腐心している。
 さて、日本の芸能界のような所属型システムを維持するためには競争環境=市場が存在しないことが前提条件となる。
 あるシステムからそれと競争関係にある別のシステムに低コストで移動できれば、抑止力は働かない。
 村八分は村から出ることにコストがかかる場合にのみ有効な手段なのである。」と教えてくれる。
 最後に筆者は、「競争的な環境はしばしば新しいシステムの到来によってもたらされる。
 小林幸子さんと「ラスボス」の事例を見よう。
 小林さんは2012年の事務所の騒動以降、既存の所属型システムにおいて干されてしまった。
 長年にわたる紅白歌合戦出演も途切れてしまう。そんな小林さんを救ったといわれるのが、新しいメディアであるインターネット上の動画共有サイトなどがつくり出した新システムだった。
 衣装というより大道具に近い巨大な格好が、ゲームのラストに登場する敵のボスを彷彿とさせることから、「ラスボス」の異名をとり、ネットでの人気が出始める。閉鎖的な旧システムから離脱した小林さんはネットという新しい市場に参加することで活路を見出す。
 ネット民から絶大な支持を受けた小林さんは、15年大みそかの紅白歌合戦において既存のスステムへの復活を遂げる。
 ネット市場という新システムがマスメディア共同体という既存のシステムを揺るがし始めた。
 既存のシステムが新システムに駆逐されていくのか。しばらくは共同体と市場のせめぎ合いから目が離せない。」として締めくくった。
 読んで、分かりやすく、面白く、いろいろ考えるヒントをいただいて、大いに為になった。
 「「事務所から独立した芸能人は干される」という慣行がある、とのこと
 「この慣行は比較的閉鎖的ないし組織化された共同体では存続しやすい。」とのこと、
 「閉鎖的な共同体で「裏切り」行為をした個人は、裏切った相手だけでなく、共同体全体から「村八分」にされる。それによって「裏切り」行為を抑止する。」とのこと、
 「「村八分」という制裁は罰を与える側も拘束する。「村八分」に参加しなかった成員は、逆に村八分の対象となってしまう。そのようにして、「村」の規範は守られるのである。」とのこと、等はよく理解出来た。むかし、共産党や公明党の議員が、党を抜けてから選挙に出ると「徹底的」に攻撃されて、落選させられていたのを思い出した。
 また、小林幸子の「ラスボス」のことは、たまたまテレビでその特集を見た。だから、「ネット市場という新システムがマスメディア共同体という既存のシステムを揺るがし始めた」という筆者の指摘は、びびっときた。
 政治の世界も、テレビ界も、新聞界も、新システムを開発・起動させる集団が出現すると、社会は革命な変化を見せるかもしれない、と思った。
 
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by sasakitosio | 2016-02-18 20:30 | 朝日新聞を読んで | Trackback