今そこにある「緊急事態」
2016年 02月 14日
今日は、この筆者に学ぶことにした。
まず筆者は、「与党・自民党は憲法に緊急事態条項が必要だという。
「有事や大規模災害のなどが発生した時に、緊急事態宣言を行い、内閣総理大臣等に一時的に緊急事態に対処するための権限を付与することができることなどの規定」(自民党憲法改正草案Q&A)したいそうだ。
「発生したとき」?
何を言っているんだろう。緊急事態なら、日本は5年前のあの日からずっと、そのまっただ中にいるではないか。
東京電力福島第一原発事故は「起きた」のではなく、「起きている」のだ。
そもそも事故直後に政府が発令した「原子力緊急事態宣言」はまだ解除されていない。
いまも大量に発生し続ける高濃度汚染水をコントロールできていない。
溶け落ちた核燃料がどうなっているのかも判明していない。
それを調べるためのロボット投入計画も思うに任せていない。
毎日7千人もの人が事態の収束に向けて全力を傾けているが出口ははるかに遠い。
にもかかわらず、現政権はたとえば避難経路が確定せず避難訓練も不十分なまま、原発の再稼働を急いでいる。
その判断と、緊急事態条項に前のめりの姿勢との間に整合性を見出すのはかなり難しい。
3.11の2か月後、ドイツのミュンヘンで社会学者の故ウルリッヒ・ベック氏と会った。リスク社会論で知られる碩学のその時の言葉を思い出す。
「あれが自然災害だった言う考え方は間違っています。地震が起こりうる場所に原子力施設を建設するというのは、政治的な決定です。自然がもたらしたことではない。人間がそこにリスクをもたらしたから自然現象が災害になったのです」」と教えてくれる。
つづけて筆者は、「リスクに備えるといいながら、リスクを直視しているように見えない。
現政権のこんなちぐはぐぶりはこれが初めてではない。安全保障法制を強引に成立させたときもそうだった。
積極的平和主義というスローガンを掲げ、中東・ホルムズ海峡の封鎖の恐れや、有事の現場から逃げ出さなければならない母子といった、現実味の乏しいイメージを強調した。
その一方で、中東で発生しているおびただしい数の難民問題は、人道的な問題であるだけでなく、世界の安定を揺るがす深刻なグローバル危機であるにもかかわらずだ。
現実の緊急事態は、政治にとって重い課題だ。だが、簡単には解決策をみつけられない。 他方、空想の緊急事態は、今そこにあるわけではない。
当時「憲法守って国滅ぶ」と保守系の政治家や言論人は繰り返した。あいまいな不安の空気を醸し出して指示につなげる。思えば、古今東西、権力者の常套手段である。
衆議院選挙の時期に有事や災害が発生して投票が出来なくなると、衆院議員がいない状態になりかねない。そのようなケースを避ける上で緊急事態条項は必要だーーー。
自民党はそう主張する。」と教えてくれる。
最後に筆者は、「では、万一の議員不在をそれほど問題視する党から、衆参同日選挙に傾く声が出るのは、いったいどういうわけだろうか。
両院を同時に選挙すれば、衆院議員はいなくなるし、参院議員も改選される半分は選挙活動で議会を離れる。どちらか一つだけの選挙時よりもっと大きな議員不在が生じるだろう。
これも、自民党が持ち出す緊急事態が空想の域を出ず、自分たち自身も懸念などしていないことを物語ってはいないか。 本当に心配なら、同日など恐ろしくて出来ないはずだ。
立法府の空白を重大なリスクと説きながら、同日選によるもっと大きな空白に頓着しない。
こんな風に改憲を考える人たちが「責任感の強い」(安倍晋三首相)という形容に与えするとは思えない。」として締めくくった。
読んで勉強になった。
あらためて、東京電力福島第一原発事故の直後政府が発令した「原子力緊急事態宣言」はまだ解除されていない、ことを思いだした。
しかも、「今も大量に発生し続ける高濃度汚染水をコントロールできていない。」、
「溶け落ちた核燃料がどうなっているかも判明していない。」、
「それを調べるためのロボットの投入計画もおもうにまかせていない。」、
「毎日7千人もの人が自体の収束に向けて全力を傾けているが出口ははるかに遠い。」、等の指摘も、あらためて確認した。
そして、「にもかかわらず、現政権はたとえば避難経路が確定せず避難訓練も不十分なまま、原発の再稼働を急いでいる」のも事実だ。
こんな、判断能力欠如、責任能力欠如、記憶力欠如、羞恥心欠如、の内閣の下で、緊急事態条項の加憲をしたら、国民の悲劇は想定外だろう、と思った。
また、リスク社会論で知られる碩学の故ウルリッヒ・ベックの言葉「あれが自然災害だったという考え方は間違っています。地震が起こりうる場所に原子力施設を建設するというのは、政治的決定です。自然がもたらしたことではない。人間がそこにリスクをもたらしたから自然現象が災害になったのです」は、目からうろこの指摘だった。