ヒトラー「わが闘争」再出版 独で注文殺到
2016年 01月 24日
今日はこの記事に学ぶことにした。
まず記事は、「日本では翻訳がかねて出版されているが、戦後のドイツでは出版が事実上禁止されてきたヒトラーの著書「わが闘争」。
昨年末に著作権切れを迎えたため、今月8日に大幅に注釈を加えてドイツで再出版されたのだが、想定を大きく上回る数の注文が殺到している。高い関心の裏に何があるのか。
(榊原宗仁)
1925~26年に刊行された「わが闘争」は上下2巻で構成される。第一巻はヒトラーの自伝が中心で、第二巻はナチスの哲学や世界観などが記される。
ナチスが政権に就くとベストセラーになり、45年の敗戦までに国内外で1200万部以上売れた。
ヒトラーの自殺(45年)後、生前の住民登録先だったバイエルン州が「わが闘争」の著作権を継承。
ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の犠牲者に配慮し、出版を認めてこなかった。
だが、昨年末、著者の死後70年間保護される著作権が消滅したため第三者による出版が可能になった。」と教えてくれる。
つづけて記事は、「このタイミングで再出版を手掛けたのは、同州ミュンヘンにある歴史研究機関「現代史研究所」。
排外主義をあおらないように批判的な大量の注釈をつけており、二巻合わせた分量は原作の約780ページの三倍近い2000ページに膨らんだ。
これだけの分量で価格も59ユーロ(約7600円)と高額だが、発表から1週間ほどで寄せられた注文は発行部数の4千部を大きく上回る約15000部に達した。インターネット通販大手アマゾン・コムでの価格は一時定価の6倍以上にもなったという。
ドイツではナチス称賛につながる書物の配布は禁じられているが、学術目的なら出版は可能になる。」と教えれくれる。
さらに記事は、「 和光大の伊藤光彦名誉教授(ドイツ政治史)は「分量を考えても、再出版本は「研究書」という位置づけなのだろう」と解説する。
「ドイツも日本同様、戦後70年を迎え、「過去の重みから抜け出し、通常の国家として振る舞いたい」と考える人が少なからず出てきた。嫌悪の対象となってきた「わが闘争」だが、読みたいと考えている人たちの中には過去をタブー視せず、何があったか自分で理解したいという思いがあるのではないか」
金沢大の仲正昌樹教授(現代ドイツ思想)は出版元の現代史研究所の性格を踏まえて背景を分析する、
この研究所は日本の財団法人のような位置づけで、連邦政府や州から補助金を得て運営しているという。
20世紀の独裁や民主化の歴史研究を手掛けており、「今回の本はドイツ国内で「反ナチスの立場を取る組織が出版した」と認識されているはず」と語る。
「ドイツ国内では、ヒトラーの蛮行を人ごとのように捉えられる「歴史化」によって社会の寛容さが揺らぎ、排外主義が台頭しつつある。
研究所は過去を批判的に振り返る契機をつくるため、批判的な注釈を大量に付けた「わが闘争」を世に出し、同様の危機感を抱く知識人をの多くが購入に動いたのではないか」」と教えてくれる。
最後に記事は、「実際、研究所側は排外主義に対する危機感を認め、「そうした時代だからこそ議論のたたき台を提供する必要がある」と強調している。
教育界でも過去の過激主義を批判的に学ぶため、高校の授業で再出版本を扱うよう求める声が上がった。
仲正教授は「学術界でもヒトラーは「特別に危険な存在」とみなされ、長く研究対象にすることが敬遠されたきた。
しかし、戦後70年という時間の経過で「批判的に扱う分には構わない」と考えられるようになってきている。
学術界の空気の変化が研究者の購買意欲を後押ししているのでは」と話した。」として締めくくった。
読んで、勉強になった。
学生の頃、「ヒトラー」とは何だ、との感じで、本屋で「ヒトラー」とある「本」を片っ端から買ってきて読んだが、良くも悪くも「記憶」に残っていない。
今年の1月1日と2日に、ベルリンのヒトラーが自殺した「地下壕」の上、今は駐車場と空き地になっている場所を、ゆっくり歩きまわって写真を撮ってきた。
数人の団体旅行がガイドの説明を聞く風景が見られる程度、看板も小さく、地元の人が熱心に来ている様子はまったく見られなかった。
ただ印象的だったのは、周りをアパート群に囲まれ、そこだけぽっかり穴が開いたようになった空間に、車が駐車し、一本直径1メートル以上のポプラの大木が周りを見渡しているように立っていることだった。
記事の中で「ドイツ国内では、ヒトラーの蛮行を人ごとのように捉えれる「歴史化」によって社会の寛容さが揺らぎ、排外主義が台頭しつつある。」との指摘は、日本でも同じことが起きているような気がした。
忘却と不寛容は、人類共通の病理なのだろうか?