憲法の良いとこ発見しませんか?


by sasakitosio

エネルギー技術 社会を変える文明のテコ

 1月15日付朝日新聞朝刊17面に、「月刊 安心 新聞」という欄がある。筆者は、千葉大学教授・神里達博氏だ。
 今日は、この筆者に学ぶことにした。
 まず筆者は、「年明け早々、中東のさらなる緊張が報じられた。サウジアラビアとイランの確執である。イスラム世界での対立が強調されることが多いようだ。当然それも重要だが、今日の中東情勢の不安定化は、「シェール革命」と呼ばれるイネルギー革命のイノベーションの影響も大きい。
 周知の通り、現在の原油価格はかなり安い。2014年前半には一バレル=100ドル(WTI原油価格)の水準にあったが、世界経済の減速懸念などにより徐々に値を下げた。そこにさらなる価格下落を招いたのは、14年11月開かれた石油輸出機構(OPEC)の総会において、サウジが長年務めてきた「生産調整役」を放棄したためである。
 言うまでもなく、OPECは石油の価格維持のためのカルテルだ。1970年代にはOPEC加盟国が原油公示価格を引き下げたことを契機として、石油危機が起きた。だがその後、北海やロシアなどOPEC非加盟国の油田の生産力が増したため、OPECの価格決定力は弱まっていった。それでも価格が下がる局面では、生産量の多いサウジが減産することで価格を維持、一定の影響を誇示していた。
 今、サウジが生産量を減らさない最大の理由は、米国のシェールオイルに対抗するためと言われる。
 シェールとは「頁岩」と訳されるが、本のページのように薄い層が重なった構造であるためそう呼ばれる。そこに天然ガスや原油が染み込んだ地層が世界各地に存在することは知られていたが、従来はガスやオイルを効率よく取り出す技術がなかった。
 しかし、近年、シェールからの採掘に関する技術革新が進んだ。詳細は省くが、水平抗井掘削技術、水圧破砕法、微小地震観測技術などだ。いずれも基本的な考え方は以前から知られていたが、改良が重ねられた結果、総合的な技術力が高まり、採算が合うレベルになったのだ。」と切り出した。
 つづけて筆者は、「とはいえ、中東の優良な油田のように「掘れば勝手に噴出す」と言うわけではないので、生産コストは安くはない。そこでサウジは原油価格を下げることでシェール産業の競争力を失わせようと原産しない作戦をとったのである。
 しかし、米国も増産を続け、ついに原油生産量世界一になったと報じられた。先月には米国議会が40年ぶりに原油輸出を認めたが、これは根本的な国家政策の変更を意味する。
 石油資源の安定供給という課題は、米国の中東戦略において、長年、重い意味を持っていた。実際、大局的に見れば、この地域の不安定は結局、オイルが招いた悲劇だったと言えるだろう。しかし今や米国は,その重い足かせから自由になった――様に見える。今回のサウジ・イランの緊張も含め、中東のみならず世界中でいま起きている政治的・経済的変動の多くは、このシェール革命を無視しては理解できないはずだ。
 だが歴史的な観点に立つならば、私たちがいつも石油に「裏切られてきた」ことも、また事実である。例えば、40年以上前の石油危機の時代に「石油はあと30年で枯渇する」などと言われた。またつい最近にも「ピークオイル」という言葉が流行し、石油資源の限界が懸念された。
しかし、現状は石油が余り、どこまで価格が下がるか予測もできない。
 なぜこんなことが起こるのか。
 一つには、石油の採掘可能な埋蔵量は石油価格が上がると増えるからだ。採掘しにくい資源も、コストをかけてよいなら元が取れる。石油が足りないと皆が言えば価格は上がり、自動的に埋蔵量も増えるのだ。手品のような話である。
 また、今は熱い期待を集めるシェール産業も、将来への不安がないわけではない。まず、現在の見込みよりも早く枯渇する可能性を指摘する専門家がいる。また採掘には大量の水を使うことから、環境汚染も以前から問題視されている。さらに地中に高圧の水を送り込むため、地震を誘発する危険性もある。」と教えてくれる。
 最後に筆者は、「エネルギーは文明を駆動する最も重要な要素の一つだ。「古代」という時代が終わったのも地中海世界の森林資源が枯渇したことが背景にあったとも言われる。他方、近代は、要するに化石燃料で発展してきた時代だ。だから20世紀以降、石油は全ての要だと信じられてきた。
 そのような「常に重要なこと」を見る私たちの目は、どうやら曇りやすい。
 例えば、かって「常温核融合」という「新技術」に世界が驚いたこともあったが、再現性がなく忘れられていった。一般に新エネルギー技術は注目されやすいが、実用化までには、しばしば何重もの壁がある。それでもエネルギーの話に、私たちはつい心を奪われてしまう。そして過信の後に、大きな落胆が待っていることも少なくない。
 だからエネルギー政策はいつも難しい判断を迫られる。真珠湾攻撃から石油危機、福島第一原発の事故に至るまで、日本の近現代はエネルギーに伴う苦難の歴史ともいえる。
 技術が私たちの未来を変えるのは確かである。だが同時に、「どんな技術が開発されるか」は、私たち自身が「どんな未来を夢見るか」に依存する。
 シェール革命はいわば、アメリカ人のエネルギーに対する執念が「物質化」したものなのだ。
 従ってもし日本に住む私たちが、エネルギーの大量消費に基づく社会を卒業すると決めたならば、また別の技術が生まれ、社会も変わるだろう。とにかく、未来はいつだって私たちの手にあるーー。これを座右の銘としたい。」として締めくくった。
 読んで、大変勉強になった。
 「今日の中東情勢の不安定化は、「シェール革命」と呼ばれるエネルギー技術のイノベーションの影響も大きい」、
 「石油資源の安定供給という課題は、米国の中東戦略において長年、重い意味を持ってきた。実際、大局的に見れば、この地域の不安定は結局、オイルが招いた悲劇だったと言えるだろう。しかし、今や米国は、その重い足かせから自由になったーーように見える」、等々の筆者の指摘は、アメリカの世界戦略の変化の行く末を見る上で、大いにヒントになると思った。
 また、「エネルギーは、文明を駆動する最も重要な要素の一つだ」、 
 「近代化は、要するに化石燃料で発展してきた時代だ。だから20世紀以降、全ての要だと信じられてきた」、 
 「真珠湾攻撃から石油危機、福島第一原発の事故に至るまで、日本の近現代はエネルギーに伴う苦難の歴史ともいえる。」、
 「未来はいつだって私たちの手にある」、
との筆者の指摘は、日本の近現代を考える上で、大いに参考になった。
日本は資源がない国なので、外国から資源を輸入し、それを加工して外国に輸出しながら、生きてゆくしかない、などと、 小中学生の頃、習った記憶がある。その時、空気と太陽と海水を資源として使用できれば日本は資源大国だ、と考えた。
 最近は、再生可能エネルギーン開発、燃料電池の開発、メタンハイドレードの研究、等も盛んになってきた。原発再稼働や、防衛予算の増加ではなく、新しいエネルギーが採算ベースに乗るような技術革新のために、「日本人の叡智と血税」を使いたいものだと思った。
[PR]
トラックバックURL : http://sasakitosi.exblog.jp/tb/22784909
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
by sasakitosio | 2016-01-17 12:21 | 朝日新聞を読んで | Trackback