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by sasakitosio

コメ農家廃業  山に消えるふるさとが問う

12月24日付朝日新聞社説下に、「ザ・コラム」という欄がある。筆者は、編集委員・吉岡桂子氏だ。
 今日はこの筆者に学ぶことにした。
 まず筆者は、「岡山の実家が今年、先祖代々つづけてきたコメ作りを「廃業」した。
 「TPP(環太平洋経済連携協定)の影響ですか?」
 東京でたいていの人がそうきく。
 「違うんです、81歳を迎えた父のあとをつぐものがないんです。」
 長女の私をふくめて3人の子どもは、田んぼを耕したこともない。廃業を知ったのは、秋が終わるころだった。年末恒例の餅つき日をたづねる電話を入れたら、「やめたんよ、イネ」と、はは。両親も子どもたちを当てにするふうではなかった。
 実家の話を書くことにしたのは、日本の農家の一つの典型にも思えるからだ。」と切り出した。
 つづけて筆者は、「わが家の田んぼの面積は、一番広かったところで1町歩と3反。1.3ヘクタールほど。兼業のコメ農家でよくある規模だ。コメの増産が奨励されていた戦後に手にした干拓地をのぞくと、ほとんどは山あいにある。専業は成り立たず、私が生まれたのをきっかけに父は会社勤めを始め、定年で退職した。20年近く前に「専業」に戻った。コメの一人当たりの消費量は半世紀で半減したし、値段も下がった。農機具や肥料の費用を差し引けば、後半は赤字だったはずだ。
 その父は数年前、運転していた愛車の青い耕運機を池に落っことした。本人はあぜ側に飛び降りた機敏さを自慢していた。だが、去年の収穫期には体調を崩してしまい、刈取りを知り合いに頼んだ。
 そして今年、田植えも稲刈りもせず、自家用に植えたモチ米を石臼と杵でつくこともない、初めての暮れを迎えている。」と教えてくれる。
 つづけて筆者は、「農林水産省によれば、自給ではなく販売している農家の7割近くが兼業で、平均年鈴は66.3歳。離農の最大の理由は高齢化である。農業をなりわいとする人口は過去30年で半分以下に減って209万人。日本の全産業の3%台まで下がった。私が生まれた60年代半ばには約2割を占めていた。
 いっぽう、過去1年は作付せず、今後も見通しがない「放棄地」は増え続け、富山県の面積に匹敵する42万ヘクタールまで広がった。実家は、一部を知り合いの農家に貸すことにした。ただし、タダである。政府は「農地バンク」を作り、貸し借りを仲介し、大規模化で効率を挙げようとしている。とはいえ、お金を払って借りてまで耕す対価を生みだせない土地も多いそうだ。
 政治を動かしてきた「票田」も、田んぼも縮んでいる。農業を守ることが「お荷物」になり、強みの工業分野で攻めきれなかった通商交渉の観点からすれば、「ようやく」だろう。
 中途半端な兼業は、専業に挑む農家の足を引っ張ってきた面もある。」と教えてくれる。
 さらに筆者は、「何十年かぶりに、田んぼを見に行った。
 山との境目には竹の柵と鉄線がはりめぐらされている。イノシシ対策である。防戦むなしく、土を捨てきれない父がコメに代えて育てたお芋やカボチャは食べつくされていた。もみ殻で焼き芋をして遊ぶ子どもの姿は消え、幼いイノシシ「ウリ坊」の足跡が残る。農協のポスターは、墓石のセールだった。
 10軒ほどあった集落は、半分くらいに減っている。うちも役場やコンビニが近いふもとに引っ越して久しい。
 桜の老木は、住む者が去ってますます枝を広げている。
もぐ人のいない柿が、初冬に紅をさすようにたわわにしだれている。
 ふるさとが山に消えていく。
 これが、日本の国際競争力をそぐと言われるほど国から「保護」されてきたはずの農村の風景である。子どものころから山の向こう側のことばかりかんがえていた私は記者になり、地元に残った妹は養護教員、弟は銀行員になった。小さい農家の先行きと自分の将来を重ねては考えられなかった。
 「まあ、桂子ちゃん、久しぶりじゃなあ」。近所のおばちゃんの声だ。たぶん30年ぶり。名前が浮かばない。ごめんね。おばちゃん。おぼえていてくれてありがとうね。もっとやれることがあったのかな。
 これから、なにができるのだろう。
 政策への問いでもあり、私への問いでもある。
 「いまさら何を」と両親ですら言うにちがいがない。
 それでも、考え続けるしかない。避けてきた苦い問いだからこそ。」として締めくくった。
 よんで、よく分かった。
 「もぐ人のいない柿が、初冬に紅さすようにたわわにしだれている。ふるさとが山に消えてゆく」とのくだりは、美しくも悲しい、景色だ。少子高齢化の風景のひとつなのかもしれない、と思った。
 
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by sasakitosio | 2015-12-28 06:59 | 朝日新聞を読んで | Trackback