憲法の良いとこ発見しませんか?


by sasakitosio

「言いたい事と言わねばならない事」全文

 9月21日付東京新聞2面に、反骨の記者・桐生悠々の記事が載った。
 今日はこの記事を学習することにした。
 先ず記事は、「人動(やや)もすれば、私を以て、言いたいことをいうから、結局、幸福だとする。
 だが、私は、この場合、言いたい事と、言わねばならない事とを区別しなければならないと思う。
 私は言いたいことを言っているのではない。徒(いたずら)に言いたいことを言って、快を貪(むさぼ)っているのではない。言わねばならないことを、国民として、特に、この非常時に際して、しかも国家の将来に対して、真正なる愛国者の一人として、同時に人類として言わねばならないことをいっているのだ。
 言いたいことを、出放題に言っていれば、愉快に相違ない。だが、言わねばならないことを言うのは、愉快ではなくて、苦痛である。
 なぜなら、言いたいことを言うのは、権利の行使であるに反して、言わねばならないことを言うのは、義務の履行だからである。尤(もっと)も義務を履行したという自意識は愉快であるに相違ないが、この愉快は消極的の愉快であって、普通の愉快さではない。
 しかも、この義務の履行は、多くの場合、犠牲を伴う。少なくとも、損害を招く。
 現に私は防空演習について言わねばならないことを言って、軍部のために、私の生活権を奪われた。
 私はまた、往年新愛知新聞に拠(よ)って、いうところの桧山事件(注)に関して、言わねばならないことを言ったために、司法当局から幾度となく起訴されて、体刑をまで論告された。これは決して愉快ではなくて、苦痛だ。少なくとも不快だった。
私が防空演習について、言わねばならないことを言った証拠は、海軍軍人がこれを裏書きしている。海軍軍人は、その当時に於(おい)てすら、地方の講演会、現に長野県の或(ある)地方の講演会に於いて私と同様の意見を発表している。なぜなら陸軍の防空演習は海軍の飛行機を無視しているからだ。敵の飛行機をして帝都の上空に出現せしむるのは、海軍の飛行機が無力なることを示唆するものだからである。
 防空演習を非議したために、私が軍部から生活権を奪われたのは、単に、この非議ばかりが原因では無かったろう。
 私は信濃毎日で於て、度々軍人を恐れざる政治家でよと言い、また5.15事件及び大阪ゴーストップ事件(注2)に関しても、立憲治下の国民として言わねばならないことを言ったために、重ねがさね彼等(かれら)の怒りを買ったためであろう。。安全第一主義で暮らす現代人には、余計なことであるけれども、立憲治下の国民としては、私の言ったことは、言いたいことではなくて、言わねばならないことであった。
 そして、これがために私は終(つい)に、私の生活権を奪われたのであった。
 決して愉快なこと、幸福なことではない。
 私は2.26事件の如(ごと)き不祥事件をみざらんとするため、予(あらかじ)め軍部に対して、また政府当局に対して国民として言わねばならないことを言ってきた。
 私は、それがために大損害を被った。だが、結局2.26事件を見るに至って、今や寺内陸相によって厳格なる粛軍が保障さるるにいたったのは、不幸中の幸福であった。と同時に、この私が、はかないながらも、淡いながらも、ここに消極的な愉快を感じ得るに至ったのも、私自身の一幸福である。
 私は決して言いたいことを言っているのではなくて、言わねばならないことを言っているのである。」と教えてくれる。
 最後に記事は、「最後に、2.26事件以来、国民の気分、少なくとも議会の空気は、その反動として如何(いか)にも明朗になってきた。そして議員もいまや安んじてーーなお戒厳令下にありながらーーその言わねばならないことを言い得るようになった。斎藤隆夫氏の質問演説(注3)はその言わねばならないことを言った好適例である。だが、貴族院に於(お)ける津村氏の質問に至っては言わねばならないことの範囲を越えて、言いたいことを言ったことになっている。相沢中佐が人を殺して任地に赴任するけしからぬというまでは、言わねばならないことであるけれども、下士兵卒は忠誠だが、将校は忠誠でないというに至っては、言いたいことを言ったことになる。
 言いたい事と、言わねばならない事とは厳に区別すべきである。(昭和16年6月)」として終わった。
 よんで、桐生悠々の志の高さに感心した。
 筆者の「言わねばばらないことを、国民として、特に、この非常に際して、しかも国家の将来に対して、真正なる愛国者の一人として、同時に人類として言わねばならないことを言っているのだ。」のなかに、その志の広さ深さを見る気がした。だから、軍部を批判し、いっとき生活権を奪われても、周りから支えてくれる人が現われたのだろう。いまどき、こんな人物は存在しているのだろうか。自分に、見えないだけなのだろうか
[PR]
トラックバックURL : http://sasakitosi.exblog.jp/tb/22221711
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
by sasakitosio | 2015-09-25 06:05 | 東京新聞を読んで | Trackback