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by sasakitosio

半分解放された国 改革の風は入る 言論弾圧には限界

 9月12日付朝日新聞17面に「オピニオン」いう面がある。一ページ使った「インタビュー」という欄がある。
 中で、書店「万聖書園」店主・劉蘇里さんに編集委員の吉岡桂子氏がインタビューした記事に学ぶことにした。
 まず記事は、「北京の大学街にリベラルな知識人が集う民営の書店「万聖書園」がある。出版や言論の自由が限られ、人権派弁護士らモノ言う知識人への弾圧も強まる中国で、書店の果たす役割とはーーー。創業から20あまりずっと、自ら選んだ本を並べてきた店主の劉蘇里さんは、書棚に何を託しているのだろう。
 ―――3年前、北京の書店から、中国でも人気の村上春樹さんをはじめ、日本の書籍が一斉に消えたことがありました。日本政府による尖閣諸島国有化への反発が高まっときのことです。
 「私の店は何も変わりませでした。書店から日本の書籍を排除する行為は中国政府からの正式な命令というよりも、中間の役人か書店自身が空気を忖度してとった行為でしょう」 
 「むしろ5年ほど前から、日本にかかわる本が売れ始めました。文学、政治、経済、法律、歴史や実用書など非常に幅広い分野にわたります。日本について、もっと深く理解したいと考える中国人が増えているからです。この100年で初めてのことでしょう」
 ―――明治維新後の日本の書籍を翻訳して、西洋の知識を取り入れようとした時代以来ということですね。ただ、国交正常化後、とりわけ1980年代には日本文化ブームがありました。
 「80年代は政府主導の「中日友好」によるものでした。改革開放直後で中国人にとってすべてが珍しい時代でした。現在は、人々自身が世界と交流を深めるなかで、日本をもっと理解したいと思うようになった現われです。」
 「中国人は旅行や留学、仕事を通じた自らの経験や口コミ、ネット情報を通じて、日本についての中国政府の伝え方はどうもただしくない、と分かったのです。これは米国や台湾に対しても同じです。」
 ―――しかし、人々が目覚めるいっぽうで、周近平体制のもと、言論の弾圧は厳しくなっています。市民活動家や人権派弁護士ら知識人が大勢、拘束されています。
 「著作についても、
 出版もネットでの意見表記も許されない人、
 ネットなら論考を発表できる人、
 過去の作品すら書店に並べられない人・・・・。
 知識人ごとに縛りがある。
しかし、長い歴史で言えば一時的でしょう。川は曲りながら前へ流れていくもの。
 知識人に不満が溜まっているだけでなく、党内の意見も必ずしも一致していないはずです。」
 ―――教育相が今年はじめ、価値観を広める教材を大学に入れるな、と発言しました。書店には多くの翻訳本がありますが。
 「授業で使うには申請が必要だと言われています。大学の先生たちも最初は用心するでしょうが、遅かれ早かれ廃れるのではないでしょうか。当局の指示と需要の間に大きな矛盾があるからです。
 「中国政府は、最先端の科学技術や文化を取り入れ、世界に追いつき、溶け込みたいと考えています。また、西洋との学術交流や留学を奨励しています。そしてネット上には、制限しても満点の星のごとく西洋の考え方、知識が溢れています。」
 ―――中国当局は大学で、ネットに書き込みをする「情報員」を養成しようとしているそうですね・
 「若者の心を毀損する話です。将来を心配する若者に、小さな利益を与えて(問題ある書き込みを当局に)言いつけさせたり、意味のない書き込みをさせたりする。
 目が覚めたら、悪いことをしたと悔やむでしょう。その罪悪に気が付かない人や認めたくない人はさらに問題です。若者の精神を汚そうとする執政党(共産党)はなんと罪深いことでしょうか」
―――大学に対して2年ほど前から、「7不講」として、人類の普遍的価値、報道の自由、公民(市民)社会、公民の権利、共産党の歴史的誤り、権貴(特権)資産階級、司法の独立を論じてはならない、とも支持しています。
 「中国の大学を文化大革命時代に、いや清朝時代以前に戻せと言うのでしょうか。マルクスだって西洋人です。今の中国は、半分は解放された国家です。半分でも開いた窓から風は入ってくるのです。すべての窓をしめるわけにもいかない。中国の発展に、外からの風が必要だからです。歴史の潮流に逆行する規定はいっときは有用でも、長続きはしません」
 「飛躍的な経済発展を遂げた中国は、世界との関係もますます密接になっています。世界との共通言語が、金もうけだけでいいはずがない。価値を共有できなければ、中国に対する誤解や無理解を外国に拡げてしまう。そのことが、中国脅威論にもつながっていることを自覚すべきです」
 ―――万聖書園は知識人の交流場になってきましたね。
 「時代を動かし得る精鋭が集う公共空間をつくりたいと思い、講師を招いてセミナーを開いてきました。これとは別に私自身は、7年前から中国と世界の関係を議論する研究会に参加しています。中心は30代前半の大学の博士課程や准教授クラスの数十人です。何かが起きてからでは遅いですから」
 ―――何かが起きる、とは。
 「今の中国では、社会、政治、どんな危機だって生じうる。ソ連が崩壊したとき、軍隊も秘密警察も中政治局だって強大でした。でも結果はどうでしょう。グローバリゼーションが進むなかで、これほど大きな国家に危機が起きれば、災難は中国にとどまらない。この国は共産党の国家ではなく、われわれの国なのです。前途は自分たちで考えなければなりません」
 「人は知識を得ることが力になるのです。私は64事件(天安門事件)の後、大学の講師に戻れず、図書館の職員に回された。それなら、書店を開いて、知識を社会に提供できる仕事をしようと考えました。自分の選んだ本が並ぶ書棚は、あたしがメッセージを伝える「メディア」でもあるのです。」
 「64事件は中国共産党だけの罪悪だとは考えません。われわれ民族共同の罪であり、傷であり、悲劇です。現代化、民主、憲政や自由といった理想を追求する過程で、政治の未成熟を露呈した事件だったと思います。」
 ―――当時と比べて、いまは?
 「いまも未熟です。人は社会で果たすべき責任や義務を知り、公民(市民)として成熟していきます。にもかかわらず、公民社会を築こうと働く人々が拘束されています。知識人の分裂も激しい。30年に渡る改革がもたらした格差など、負の責任はどこにあるのか。党か、市場か、米国の陰謀か。ここ数年は民主主義に反対する知識人すら現われています。」
 ―――金融危機のような民主主義国家の経済的失敗が原因ですか。
 「個人の経済的な利益にも、関係しています。この体制下で先に利益を得た人たちは、民主化で失うことが怖いのでしょう。」
 「最大の問題は政治制度です。統治の手法と社旗の発展の間に、深刻なねじれがある。不満を表現する手段を持たない集団が、危機に直面したらどうなるか。その混乱を思うと楽観できません。」
 ―――答えはあるのですか
 「大きな国がうまくやっていくには、個人的には連邦制だろうと思っています。地方にもっと権力を移譲すべきでしょう。新疆ウイグル自治区では、資源を持って行かれるだけで地元にはいいことがない、という怒りがある。上海や深川(広東省)など都会には別の怒りがある。自分たちが稼いだ税金で地方を養っている、と。こうした不満を抑えて国を安定さるには、人々に近いところに権力を分散して移す改革が必要です」」と教えてくれた。
 読んで、中国の事情がまた、少しわかったような気がした。
 劉氏の言葉。・・・
 北京の書店から日本の書籍が一斉に消えた件で「中国政府の上からの正式な命令というよりの、中間の役人か書店自身が空気を忖度して取った行動でしょう」、
 市民活動家や人権派弁護士らが拘束されてる件で「・・しかし長い歴史で言えば一時的でしょう。・・知識人に不満が溜まっているだけでなく、党内の意見も必ずしも一致していないはずです」、
 教育相の西側の価値観を広める教材を大学に入れるなの発言の件で「・・遅かれ早かれ廃れるのではないでしょうか。当局の指示と需要の間に大きな矛盾があるから」とか「・・ネット上には、制限しても満点の星のごとく西洋の考え方、知識が溢れています」、
 「7不講」の指示の件で「・・世界との共通言語が、金もうけだけでいいはずがない。価値を共有できなければ、中国に対する誤解や無理解をひろげてしまう。・・」、
 何かが起きてからでは遅い、との件で「今の中国では、社会、経済、政治、どんな危機だって生じ得る。・・・これほどの大きな国家に危機が起これば、災難は中国にとどまらない。この国は共産党の国家ではなく、我々の国なのです。・・」、等、分かりやすい話をされた。
 また劉氏は、「・・30年位にわたる改革がもたらした格差など、負の責任はどこにあるのか、党か、市場か、米国の陰謀か。現代化に向かって強めるべきは、国家権力か、市場の力か。ここ数年民主主義に反対する知識人すら現われています」、「最大の問題は政治制度です。統治の手法と社会の発展の間に、深刻なねじれがある。不満を表現する手段を持たない集団が、危機に直面したらどうなるか。その混乱を思うと楽観できません」、と話している。
 中国に、劉氏のような人がいることが、中国に対する「日本人の」誤解や無理解を広げない、おおきな要因になると思った。と同時に、劉氏が当局からまたまた拘束などということの無いことを祈った。
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by sasakitosio | 2015-09-14 07:23 | 朝日新聞を読んで | Trackback