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憲法の良いとこ発見しませんか?


by sasakitosio

ピケティに寄せて

2月8日付東京新聞朝刊4面に、「時代を読む」という欄がある。筆者は、東大名誉教授・佐々木毅氏だ。今日は、この筆者に学ぶことにした。

 まず筆者は、「トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」が注目を集めている。経済学の専門書がこれだけ注目されたのは初めてという声もある。日本では、本の主題である格差問題や税制などについての彼の主張に関心が集まったようである。多くの人々がその種の議論に触発され、格差を含めた経済・財政問題に対する感覚を研ぎ澄ますのは結構なことである。」と切り出した。

 つづけて筆者は、「こうした動きを横目に見ながら私は彼の歴史論に注目したい。ピケティ氏が格差縮小時期として挙げる第一次世界大戦から1970年代までの時期をどう読み解くかは非常に重要だ。この時期は戦争と革命、大恐慌と資本の破壊の時代であるが、同時に中間層が多数誕生し、福祉国家が現実となった時代であった。特に黄金の60年代とも言われた時代の経済成長は目覚ましく日本もその大波に乗った感があるが、経済成長と格差の是正が一挙に進んだのは重要な点であった。この時期がそれ以前、それ以後の時期と違った特徴を持った、資本主義の歴史の中で例外的な時期であったことをかれは強調したが、これは経済学にとっても歴史認識にとっても重い指摘である。私も20年余り前からこの時期の民主制を「20世紀型システム」という概念で特徴づけてきたが、ピケティ氏の指摘が新しいのは、この時期が資本主義経済の現実を考える上で基準にならない、例外であると明言した点である。」と教えてくれる。

 さらに筆者は、「これを日本の文脈に置けば、経済成長の再現に期待をかける「夢よもう一度」はかなわぬ夢だということである。「経済成長」と聞くと、その再現で現在の格差問題が解決できるかのような幻想にふけるのは無理だということになる。日本人には突き放した言い方に聞こえる。

その上、「まだまだ大丈夫だ」と、余剰幻想とでもいうべきものに寄りかかり、万事を先送りしているのではないか。この点でピケティ氏は、われわれに発想の転換を勧めている。

 ここには日本における世代間の亀裂が顔をのぞかせる。ピケティ氏の言明は古き良き時代を知らない世代には自明のことである。彼らには、あの時代がどうだったかを耳にすることは慰めにならない。「昔は00だった」と言いたがる世代に早く発想を切り替えてもらい、社会保障の在り方や負担給付問題の議論に参加してもらいたいというのが偽らざる気持ちではないか。

 貧富の格差に劣らず世代間の亀裂、地域間の亀裂もまた、厳しい相貌で迫ってきている。」と指摘した。

 最後に筆者は、「「夢よもう一度」が幻想なら地道な努力しかない。ピケティ氏が言うように、格差社会では消費税の天井はかなり低くなる(これを格差が少ない時代から使いこなしてきた西欧と横並びで数値を論ずることがどこまで妥当か)。

 そうだとしたら、歳入の頭打ちを前提に歳出の見直し論が始まらざるを得ない。その段階で余剰幻想から養分を得てきた政治も終わりを迎える。

 そうなれば20世紀型の年配者中心の民主制は終わり、政治は高度成長を知らない世代に委ねられる。社会保障制度の見直しが容赦なく行われるかもしれないし、多くの国民は、より長い期間働かなければならないかもしれない。

 しかし望むべくは、問題の先送りではなく「品位ある社会」の計画と実現に粘り強く取り組むことにより日本の民主政の名誉を守ることである。」と締めくくった。

 思えば、筆者の過日の「この欄」で、トマ・ピケティの「21世紀の資本」(未訳)を見て、邦訳を待ちに待って、昨年12月9日の発売と同時に取得し、はじめに、おわりに、1章から16章まで、ざっとみた。今は、ワードで書写しナガラの読書が、190頁近くまでたどり着いた。一日も早く、完写し、その後自分の感想をつけてブログにアップしたいという野望を持っている。

 この欄の筆者が「彼の歴史観に注目したい。」、「ピケティ氏が格差縮小時期として挙げる第一次世界大戦から1970年代までの時期を・・・・・・この時期がそれ以前それ以後の時期と違った特徴を持った、資本主義の歴史の中で例外的な時期であったことを彼は強調したが、これは経済学にとっても歴史認識にとっても重い指摘である」、と取り上げている点は、興味深く読んだ。

 そして、経済的格差は「品位ある社会」において、どの程度の「倍率や期間」ならば、良いのだろうか?

 それとも、そもそも、経済的格差は、天賦的には存在してはいけないものなのだろうか?

 自由と平等を誰にでも保障する社会では、個体の質的違いが差を生み、その積み重ねが格差になるのは、不可避のような気もするが?

 この欄の筆者を含めた「日本の有識者」の皆さんに教えてほしいと思った。

 


by sasakitosio | 2015-02-08 10:18 | 東京新聞を読んで | Trackback