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by sasakitosio

新旧蔵相の対立 求むアベノミクスの好敵手

1月24日付朝日新聞社説下に、「ザコラム」という欄がある。筆者は、編集委員・駒野剛氏だ。今日はこの筆者に学ぶことにした。

先ず筆者は、「デフレ覚悟の構造改革か、インフレ甘受の景気浮揚かーーー。

 アベノミクスに邁進する安倍晋三首相の経済政策に、新年早々、物申すのはヤボだろう。とは言うものの、経済を緩和基調で運営するか、引き締めるかは、どんな時代でも政治の大争点である。

 1932年(昭和7年)1月21日。議場は異例の熱気と興奮に包まれていた。朝日新聞は「殺気早くも場を圧す」「朝(与)野党の白兵戦」「政策攻撃に終始」などと激しい舌戦を活写している。

 政権復帰後の政友会は、総選挙に打って出る構え。帝国議会は民政党前政権の看板政策だった金本位制と緊縮財政をめぐり与野党が激突した。山場は、政友会内閣・高橋是清と前民政党政権・井上準之助の新旧蔵相による論戦である。」と切り出した。

 つづけて筆者は、「「(前内閣の経済政策は)全て所期に反し、我が国民経済は極度に困憊し、前途暗澹たる状態に陥った。モノを作れば損失を招き、売ればさらに損失を招く物価の下落は不健全だ、と決めつける高橋。

 井上が立ち向う。政友会による金本位制の停止を見込んでドルを大量に買った銀行、商社が暴利を稼いだと指弾。「これが政治の要諦か。政治道徳に反しないのか」。景気の浮揚に財政出動すれば国債の大増発が必要で「非常な通貨膨張を来す」。行き着く先は物価の暴騰とかみつく。

 選挙前の非難の応酬とだけ見るのは浅薄だろう。その後の日本の歩みを考えれば、将来を決定づける論争だったからだ。

 苦労して日本銀行総裁、蔵相、首相へ上り詰めた高橋は、国際市場で日露戦争の軍資金を調達、数々の経済危機でも火消し役を務めたマネーの世界の大立者だ。

 井上は帝国大学から日銀に入り、生え抜き初の総裁に。金融恐慌では高橋と協力して危機を収拾した。日銀総裁、蔵相を各2回務めた金融、財政のプロだ。

 一体だった二人が対立したのは「日本の未来図をどう描くかで、決定的な違いを生じたからだ」と近代経済史に詳しい慶応大経済学部の竹森俊平教授は指摘する。」と教えてくれる。

 さらに筆者は、「二人の未来図を想像してみよう。

 高橋は、国内の経済基盤が充実するよう積極財政で支えて景気を良くし、当時の国富の象徴、金を大量に蓄積させ、これを元手に、アジアに日本主導の経済圏を造ることに備えたい。そんな気宇壮大な将来像も描いていた、と考えられる。

 井上は、日本経済が行き詰まっていると見ていた。国内産業を育てるにも、貿易赤字が多く、為替の不安定という弱点の克服が欠かせない。先進国が導入するグローバルスタンダード、金本位制への復帰をテコに経済を鍛え直す。そのための緊縮は避けられず、無論、軍縮も聖域ではない。

 国民は当初、井上の目指した構造改革を支持したが、緊縮にはデフレ不況という副作用がある。耐え切れず、今度は高橋による景気回復に期待をかける。

 総選挙で高橋の政友会は301議席と歴史的な圧勝を遂げ、井上が選挙委員長だった民政党は前回からほぼ半減した。

 だが国民の審判を井上は知らない。応援演説に立ち寄った東京・駒込で、右翼系結社の血盟団員に銃撃され亡くなっていた。

 高橋は最強の批判者を失った。論争は繰り返されず、国策は一本道となる。積極財政の推進、その財源確保のため日銀による国債の直接引き受け、そして円安の放置という3本柱の政策だ。

 当座の景気は好調さを取り戻すものの、財政の規律が揺らぎ始める。農村の不況対策費がばらまかれ、軍事費の増大も目覚ましかった。さすがの高橋も抑え込もうとするが、36年2月26日、青年将校率いる陸軍部隊に殺される。死後、「軍事国債は生産的だ」の声がまし、井上の予言通り、財政は膨張を続けた。

 そして日米開戦――敗戦。日銀引き受けで大量発行された通貨が戦後の悪政インフレの源となり、国債は紙切れ同前になる。」と教えてくれる。

 最後に筆者は、「アベノミクスは、財政出動や異次元の金融緩和など3本の矢で、デフレ脱却と景気回復を目指す点で高橋財政を思わせる。

 「この道しかない」という安倍氏への期待からか、総選挙で自民は大勝した。

 それでも問いたい。道は一本だけか。

 少子高齢化、グローバル経済への対応、1千兆円超の借金と課題は多い。高橋―井上対決のようにがっぷり四つに組んで論争する政治家が、今ほど求められている時はない。

 26日召集の通常国会では、首相の所信表明演説がない見通しだ。岡田克也代表の新体制となった民主党が要求しなかったからだという。何とも情けない。

 雪が舞う中、大分県日田市に井上の生家を訪ねた。併設の「清渓文庫」で遺品を拝見した。襲撃時に井上が着ていて、穴が三つあいたコートと金本位復帰の際に自ら筆を執った書2点が目にとまった。

 「遠図」と「光明」。改革の困難を思いながら、その先の成功を信じたのか。今の政治家こそ必要な覚悟と希望に思えた。」と締めくくった。

 読んで勉強になった。

 高橋是清と井上準之助は、ともに暗殺されたことは知っていたが、その経済政策の違い、未来図の違いはこの欄で教えてもらった。日本の経済力、世界の中の日本に位置、ネット社会とグローバル化、等々時代状況が異なるが、筆者の指摘「アベノミクスは、財政出動や異次元の金融緩和など3本の矢で、デフレ脱却と景気回復を目指す点で高橋財政を思わせる」との指摘は当たっているような気がした。

 ただ願わくば「軍事費は景気対策」「赤字国債は景気対策」「日銀の国債引き受けはデフレ脱却策」だなどとの声が増すことの無いように、そして「悪性インフレ」「国債は紙切れ同然」の歴史は繰り返さないようにしてほしいと思った。そして、今の程度の為政者で何とか日本国が回っていることは、喜ぶべきか、嘆くべきか、その答えの出るのは案外近いかもしれない。


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by sasakitosio | 2015-01-29 07:02 | 朝日新聞を読んで | Trackback