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憲法の良いとこ発見しませんか?


by sasakitosio

軍事クーデター 共生への対話が葬られた

 6月15日付朝日新聞社説下に、「風」という署名入りの囲み記事がある。筆者は、アジア総局長・大野良祐氏だ。
 今日はこの記事に学ぶことにした。
 筆者は、「5月22日、タイでまたクーデターが起きた。
 タクシン元首相の妹、インラック首相が率いる政権の打倒を叫ぶデモが始まったのが昨年11月。インラック氏は下院の解散・総選挙に打って出たが、反政府は「何があっても選挙に応じない」と議会制民主主義の枠外で戦いを続けた。とどめがクーデター。選挙で選ばれた政権が半年かけて倒壊した。不条理を見るようだった。
 選挙を拒み、軍の介入を待つ反政府運動。この点が一番わかりにくい部分だ。」と切り出した。
 続けて筆者は、「ラッタプラハーン。タイ語でクーデターは「国家を死刑する」という、恐ろしい響きを持つ。しかし、軍が政治混乱をリセットするサイクルは繰り返され、今回のクーデターは1932年立憲君主制移行後19回目とされる。
 「共産主義から国を守るため」「政治家の腐敗が限度を超えた」・・・・時々で背景は異なるが、共通するのは、近代化を先導してきた軍には国王の意を体して政治を正す特権が与えられているという国民認識があったという点だ。この半年間、タイの軍担当記者たちはプラユット陸軍司令官に同じ質問を繰り返した。
 「クーデターを起こす気はあるか」。クーデターも選択肢だという、ある種共通理解があることを示す。
 国王を頂点に高級官僚が国家運営を担い、知識層や大企業が特権と引き換えに体制を支える。農民や労働者はシステムに従う。選挙を通じた議会や内閣も極端に言えば全体の一部であり、「国体」に悪影響を与える混乱を起こせば守護者である軍がクーデターでとり除く~政治学者が語る「タイ式民主主義」をまとめると、こんな具合だ。」と指摘した。
 続けて筆者は、「2001年に首相に就いたタクシン氏は新興企業の経営者として財をなし、農民らが恩恵を実感できるポピュリズム的政策で「体制外多数派」を結集した。選挙のたびに勝利するタクシン体制が続けば伝統的支配層は特権を失う。
 こうした危機感が前回06年のクーデターに繋がり 、タクシン氏を失脚させたといわれる。
 だがタクシン派は選挙で復活した。いま反タクシンは「06年のクーデターは手ぬるかった、と振りかえり、プラット氏に徹底的なタクシン派封じ込めを期待する。軍事政権によるクーデター後の統制はかってなく厳しい。
 クーデターや民主主義に関する議論は封印され、取材に応じてくれる識者がほとんどいない現状だ。」と教えてくれる。
 さらに筆者は、「70年代からの民主化運動に取り組んできたチュラロンコン大学のスタチャイ准教授(歴史学)はタクシン派と目され、3日に軍政から出頭命令をを受けた。解放後取材に応じたスタチャイ氏は「疲れてしまった、もいうんざりだ。」と語った。20歳で運動に身を投じて38年。この間クーデターが5回起き、積み上げたものがその都度吹き飛んだ。
 クーデターで失われたものは何だろう。
 前回の選挙で示された民意は葬られ、憲法が破棄された今、新憲法下での総選挙による民政復帰がいつになるのか判然としない。」と教えてくれる。
 最後に筆者は、「だがおそらく、痛恨の逸失は「異なる価値を持つ人々が共に生きていくための痛みを伴う対話」(チャリダボーン・タマサート大学准教授)ではないだろうか。民主主義に踏みとどまり、危機を乗り切るチャンスを、タイはもう何度も奪われている。」と締めくくった。
 米寿を過ぎた知人がチェンマイに永住している。タイ人の妻やその家族と共に。で、余計にタイのクーデターが気になっていた。軍によるクーデターもタイの民主主義と知って、所変われば民主主義も変わるものだと思った。安否を知りたくて、メールを送っておいた。
 「国王を頂点に高級官僚が国家運営を担い、知識層や大企業が特権と引き換えに体制を支える。農民や労働者はシステムに従う。」という点は、日本もいくらか似ているような気がした。
 「選挙を通じた議会や内閣も極端に言えば全体の一部であり、「国体」に悪影響を与える混乱を起こせば守護者である軍がクーデターでとり除く~~」という点は、理解しがたいが、その国が平和が保たれれば外からとやかく言うことではないのではないか。あとはタイの国民が決めることだと思った。
 ただ、「選挙のたびに勝利するタクシン体制が続けば伝統的支配層は特権を失う」という指摘は、今の日本にあてはまらないのだろうか? 伝統的支配層の特権喪失の恐怖心に基づく「抵抗」が、今の原発問題を分かりにくくしているのではなかろうか?
by sasakitosio | 2014-06-21 10:22 | 朝日新聞を読んで | Trackback