憲法の良いとこ発見しませんか?


by sasakitosio

政治家の妄言と「世界」の喪失

 4月24日付朝日新聞朝刊19面に、「あすを探る」という署名入りの囲み記事がある。筆者は、批評家・濱野智史氏だ。
 今日はこの記事に学ぶことにした。
 筆者は、「政治家は、特に安倍首相とその側近たちの妄言が相次いでいる。その多くが歴史認識問題や憲法解釈をめぐるものだが、筆者が特に気になったのは、「今月の3点」でも取り上げた、首相が観桜会で詠んだという次の句である。
 「給料の 上がりし春は 八重桜」。
 東大教授の安富歩氏はこれを見て、ツイッター上で
 「八重に上がるは 消費税かな」、と見事な下の句をつけて皮肉った。
 確かにこの首相の句がまずいのは「日本人の大半が正規雇用であり、春闘を通じて給料が上がった」と考えているようにしか見えないことだ。この句を見たら、例えば非正規雇用の立場にある多くの人がどう思うのか、どうやら全く視野に入っていないのである。これはゆゆしき事態だ。」と切り出した。
 つづけて筆者は、「政治家の妄言は今に始まったことではないが、あまりにも知的レベルが低いとしか思えない発言が連鎖する現状をどう考えたらいいのだろうか。筆者がインスピレーションを得たのは、建築家の山本理顕氏が「思想」で連載中の論文「個人と国家の<間>を設計せよ」である。
 難解なことで知られるハンナ・アーレントの「人間の条件」を、古代都市の建築構造を元に明瞭に読み解いている、この論文は、上のような問題を直接に扱っているわけではないが、公人たる現代の政治家たちがなぜ妄言を繰り返すのか、その答えの手がかりを与えてくれる。それは彼らが「世界」を失っているからだ、と。
 アーレントが「世界」のモデルとしたのは、古代ギリシャのポリス(都市国家)である。ポリスとは、人が生きて存在し、活動していたことが永遠に記憶される装置であった。
 例えば建築家がつくった建物は永遠にポリスに残り、その名前は後世に受け継がれる。この記憶装置こそが「世界」である。そして「世界」は公共性の条件でもある。例えば政治家が人々の前に現れて話すとき(アーレントの言葉では「行為」)それが「永遠に残る」と思えば、誰が聞いても恥ずかしくない公的な言葉が自然に出てくるだろう。
 そしてアーレントも指摘するように、現代社会に生きる我々は、すでに「世界」を喪失して久しい。巨大な都市化を遂げた現代社会では、もはやポリスのような小規模の共同体空間は維持できない。効率性だけが追及される資本制社会では、多くのひとびとは(かってポリスでは奴隷が担っていた)食いつなぐだけの「労働」にしか従事できず。後世に残る「仕事」には関われない。だから疎外感を味わう。政治家も自分の発言が「永遠に残る」などと全く感じていないだろう。だから反知性的な発言を繰り返す。」と教えてくれる。
 さらに筆者は、「つまり、私たちの社会は、(「日本を取り戻すよりも先に」「世界」を取り戻すべきなのだ。「世界」の再設計、それは決して不可能なことではないはずだ。ポリスのような小規模な地域の「現場」で、自分の行動が人々に常にみられ、記憶され,後生に受け継がれていくと実感できる「世界」に関わること。
 例えば、エコノミストの藻谷浩介氏の近著「しなやかな日本列島のつくりかた」では、商店街・限界集落・観光・農業・郊外開発といった地域の「現場」に関わる専門家たちとの対話が繰り広げられているが、ここはまさに「世界」を復興するための希望が満ちている。つくづく感じるのは、規模の小さな地域の「現場」だからこそ、人々が関わり合い、血の通った知恵が生まれ、変革の可能性が開かれるということだ。
 「スモール・イズ・ビューティフル」ならぬ、「スモール・イズ・インサイトフル(洞察に満ちている)」なのである。」と指摘した。
 最後に筆者は、「そしてこの論壇時評面に求められる役割は、そうした「世界」の再設計に繋がるような(藻谷氏の言葉を借りれば)「現智」を取り上げシェアすることだと、論壇委員を担当して早4年目の春に、筆者は強く確信している。」と締めくくった。
 読んで勉強になった。
 1.行為それが永遠に残ると思えば、誰が聞いても恥ずかしくない公的な言葉が自然に出てくる、との指摘は、一理あると思った。
 1.ポリスとは、人が生きて存在し、活動していたことが永遠に記憶される装置であった、との視覚は、新鮮に受け止められた。そして、この記憶装置こそが「世界」であるとのこと。
ただ、釈迦の悟り、すべてのものは移り変わり、移ろいゆく。それに心を奪われてはならない、との教えもまた、すとんと心に落ちる。
 わたし的な「世界」は、自分は地球の居候「人類」の一員であり、生きてきたことが、せめて地球や人類の発展変化の妨げにならないこと、かも知らないと思っている。
 
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by sasakitosio | 2014-04-29 08:17 | 朝日新聞を読んで | Trackback